3月11日の世界の昔話
七つの星
トルストイの童話 → 詳細
むかしむかし、ある村で、毎日毎日、あつい日でりが続きました。
雨がちっとも降らないのです。
池も井戸(いど)も、すっかり水がなくなってカラカラです。
ある家に女の子がいましたが、お母さんが病気になって寝こんでしまい、
「ああ、水を飲みたい、水を飲みたい」
と、いうのです。
女の子はどうにかして、お母さんに水をあげたいと思って家を出ていきました。
でも、どこをさがしても、ひとしずくの水さえも見つかりません。
女の子は疲れてしまって、野原の中の草の上にすわると、そのまま眠ってしまいました。
しばらくして目をさました女の子は、目の前にあるものをみてビックリ。
すぐ前に、一本の木のひしゃくが置いてあり、その中にきれいな水が光っているのです。
「あら、水だわ!」
女の子は喜んで、そのひしゃくを取りあげました。
すぐに飲もうとしましたが、
「いいえ、わたしよりもお母さんに早く飲ませてあげましょう」
急いで、家のほうへかけていきました。
すると、途中で一匹のイヌがいいました。
「わたしはのどがかわいて死にそうです。一口だけ飲ませてください。ワン」
女の子は、かわいそうにおもい、手のひらに少し水を入れると、イヌにさし出しました。
イヌはよろこんで、ピチャピチャと水を飲みました。
するとふしぎなことに、木のひしゃくは、キラキラと光る銀のひしゃくに変わりました。
それから、急いで家へかえった女の子は、
「さあ、お母さん、お水ですよ」
お母さんは、ゴクリ、ゴクリと、ひしゃくの水を飲みました。
「ああ、おいしかったわ、ありがとう」
お母さんがそういったとき、銀のひしゃくは、金のひしゃくに変わりました。
そのひしゃくの底には、まだ水が少し残っています。
女の子が、今度はやっと自分が飲もうとすると、ふと、ひとりの知らないおじいさんがやってきました。
「のどがかわいてたおれそうです。一口でも水を飲ませてください」
残っている水はわずかです。
おじいさんにあげてしまうと、自分は飲むことができません。
でも女の子は、
「はい、どうぞおあがりなさい」
と、いって、ひしゃくを渡してしまいました。
その人は、うれしそうに水を飲むと、
「ありがとうございました」
おれいをいって、出ていきました。
女の子は、あとに残ったひしゃくを見てビックリしました。
ひしゃくからは、きれいな水が、こんこんとわき出ているのです。
女の子がよろこんで飲んだあと、金のひしゃくには、ピカピカと光る美しい七つのダイヤモンドがついていました。
そうして、それが空へ飛んでいったかと思うと、七つのお星さまになり、ひしゃくの形の星座(せいざ)になりました。
それから、ひしゃくの水を飲んだおかげで、お母さんの病気もなおり、二人はしあわせに暮らしたということです。
おしまい
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