11月12日の世界の昔話
魔法の本
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むかしむかし、どんな事でも書いているという、魔法の本を持っている王さまがいました。
この王さまはこの魔法の本を使って魔法使いと勝負しようと、国中におふれを出しました。
《魔法を使って、うまく姿を隠した者には、国の半分をやろう。
だがその代わりに、見つけたら首をはねてやる》
これを知った魔法使いの若者が、王さまと勝負する事になりました。
「お前が負けたら首をはねてやるが、それでもよいか」
「はい。その代わり買ったら、本当に国の半分をくださいよ」
若者はさっそく魔法でイタチに化けると、お城の庭を走り抜けて野原に出ました。
そして今度はウサギに化けると不思議の国まで行って、草の中に飛び込んで三つの花に姿を変えました。
次の日、朝早くに起きた王さまは、魔法の本を開きました。
「なになに、あのイタチになった若者は、あれからウサギになって不思議の国で三つの花になったのか」
王さまは家来を命令して、不思議の国の草の中に咲いている三つの花を取りに行かせました。
その花を見つけた家来は、その花を引き抜いてハンカチに包むと王さまのところへ持って行きました。
「さあ、見つけぞ」
王さまがハンカチを広げると、三つの花に化けていた若者は人間の姿に戻って、王さまに手を合わせてお願いしました。
「お願いです。もう一度だけ、勝負をしてください」
「ようし、もう一度だけ勝負してやろう。だが、いくらやっても魔法の本からは逃げられないがな。あははははは」
若者は今度もイタチになって野原に出ると、ウサギになって不思議の国へ行きました。
不思議の国の森には、天まで届くカシの木が一本立っていました。
若者はカシの木に登ると、針に化けて木の皮にささりました。
するとそこへ七色の美しい鳥が飛んできて、針に化けた若者に言いました。
「どうして、そんなところにいるの?」
若者は人間に戻ると、魔法の本を持った王さまと勝負をしている事を話しました。
すると七色の美しい鳥が、若者に言いました。
「王さまが魔法の本を持っているのなら、こんな所に隠れてもむだよ。魔法の本はどこに隠れても、あなたを見つけてしまうわ」
「では、どうすればいいのだろう?」
「魔法の本はね、自分の力で隠れても必ず見つけてしまうわ。でも、他の誰かがあなたを隠せば大丈夫よ。ここはわたしにまかせて」
そう言って七色の美しい鳥は若者を小さな羽に変えると、自分のつばさの中に隠して王さまのところへ飛んでいきました。
そして寝ている王さまの服の中へ、こっそりと羽を入れました。
さて、王さまは朝早くに起きると、魔法の本を開きました。
「なになに、あの若者はイタチになって、ウサギになって、不思議の国でカシの木に登り、針に化けたというんだな」
そこで王さまは家来たちに若者が化けた針を取りに行かせましたが、家来たちがいくら探しても針は見つかりませんでした。
その知らせを聞いて、王さまは大きな声で言いました。
「どこに隠れている! さっさと出てこい!」
そのとたん、王さまの服の中から羽が一枚飛び出して、ぱっと若者の姿に変わりました。
「さあ、王さま。約束通り、国の半分をください」
「むっ、むむむ・・・」
王さまはくやしがりましたが、約束ですから仕方ありません。
王さまは国の半分を、若者にあげることにしました。
そして王さまは、二度と魔法の勝負をしなくなったそうです。
おしまい
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