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たなばたのお話し 第 6 話

天女の妻

天女の妻
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 むかしむかし、雲の上の天上に、七人の美しい天女の姉妹が住んでいました。
 天女たちは、天上の神さまの娘です。
 天女たちの仕事は雲の様に白く美しい布をおる事で、その布から作られた天衣(てんい)と呼ばれる着物をはおれば、誰でも自由に空を飛べるのです。

 ある日の事、一番下の妹の天女が言いました。
「ねえ、お姉さま。この天衣をはおって、地上の川で水浴びをしましょうよ」
「でも、地上には恐ろしい人間がいるのですよ。もしも人間に捕まったりしたら」
「大丈夫よ。人間がやって来たら、天衣で空を飛んで逃げてしまえば」
「そうね。では、地上へ行きましょう」
 こうして七人の天女たちは、天衣をはおると地上へと向かいました。

 さて、地上では一人の若者が、年老いた牛と一緒に貧乏な暮らしをしていました。
 両親を早くに亡くした若者は、しばらくのあいだ兄夫婦と三人で暮らしていたのですが、やがて兄夫婦は若者を毎日いじめるようになり、
「この老いぼれ牛をやるから、お前は出て行け!」
と、子どもの頃から友だちだった牛と一緒に、家を追い出されてしまったのです。
 若者と牛は細々と暮らしていましたが、ある日突然、その年老いた牛が人間の言葉でこう言ったのです。
「ご主人さま。
 今日は天上の美しい天女たちが、地上に降りて来て水浴びをするでしょう。
 その天女の天衣を盗んでしまえば、天女は天に戻れずあなたの妻になるでしょう」
 それを聞いた若者は、牛に教えられた川のほとりで天女たちが降りて来るのをじっと待っていました。
 すると牛が言った通り、天衣をまとった七人の天女たちがフワフワと地上に降り立ったのです。
 七人の天女たちは着ていた天衣を松の木にかけると、楽しそうに水浴びを始めました。
 若者はそっと松の木に近づくと、その天衣を盗もうとしました。
 すると天衣をかけていた松の木が、
「天女さま。人間が天衣を盗もうとしていますよ!」
と、大声でしゃべったのです。
「きゃー! 人間!」
 天女たちはあわてて走り出すと若者よりも先に自分たちの天衣をつかんで、それをまとって天へと登って行きました。
 でも、一番遠くで水浴びをしていた一番下の妹の天女だけが遅れて、若者に天衣を奪われてしまったのです。
「お願いです。天衣を返してください! それがないと、天上に帰れないのです!」
 天女は頼みましたが、若者は天衣を返そうとはしません。
 それどころか、天女の目の前で大切な天衣を燃やしてしまったのです。
「ああ、天衣が・・・。大切な天衣が・・・」
 泣き崩れる天女に、若者が言いました。
「わたしは貧乏ですが、あなたの為に一生懸命働きます。だから、わたしの妻になって下さい」
 天衣を燃やされて天上へ帰れなくなった天女は、仕方なく若者の妻になりました。

 若者は天女との約束通り、田畑を耕して一生懸命に働きました。
 そのうちに天女も若者の事が好きになって、得意のはたをおり始めるとそれを売って生活を助けました。
 やがて二人の間には息子と娘の二人の子どもが生まれ、四人は幸せな毎日を過ごす様になりました。

 ところがある日の事、若者が畑仕事から家に帰ってみると、家には妻の姿がなく、残された二人の子どもが泣きじゃくっているのです。
「妻は? 妻はどこへ行ったんだ?」
 若者が天女の姿を探していると、年老いた牛が若者に言いました。
「ご主人さま。先ほど天上の神兵がやって来て、奥さまを天上に連れ帰ってしまったのです」
「天上に! そんな・・・」
「ご主人さま。今すぐに、奥さまを追いかけるのです」
「しかし、天上にはどうやって行けばいいのだ? 空を飛ぶ天衣は、燃やしてしまったぞ」
「一つだけ、方法があります。
 それはわたしを殺して皮をはぎ、その皮をまとうのです。
 長く生きた牛の皮には、空を飛ぶ力がありますから」
「そんな、お前を殺すなんて」
「いいのです。
 年老いて働く事が出来ないわたしを、あなたと奥さまは大切にしてくださいました。
 私の出来るご恩返しは、これしかないのです。
 さぁ、早く殺しなさい」
「しかし・・・」
 天女と結婚出来て二人の子どもを授かったのは、全てこの牛のおかげだと思うと、若者にはとうてい牛を殺す事なんて出来ません。
 若者が迷っていると、
「ご主人さま。どうぞ、お幸せに」
 牛はそう言うと、自分で柱に強く頭を打ちつけて死んでしまいました。
「ありがとう。お前の恩は、一生忘れないよ」
 若者は泣きながら牛の皮をはいでまとうと、二人の子どもを入れたかごを持って天へと昇って行きました。

 若者たちが雲の上の天上に着いてみると、遠くの方に神兵に連れ去られていく天女の姿が見えました。
「妻よ! 助けに来たぞー!」
「あなたー!」
 天女は神兵の手をふりほどくと、若者たちの方へ走ってきました。
 若者と子どもたちも、天女の方へ走っていきます。
 そして天女と若者たちが抱き合おうとしたその時、天の一角から巨大な手が伸びて来て、天女と若者たちの間にさっと一筋の線を引きました。
 それは天上の神の妹である西王母(せいおうぼ)の手で、西王母が頭につけていた金のかんざしを抜いて線を引いたのです。
 西王母の引いた線からたちまち水があふれ出して大河となり、天女と若者たちの間に大きく広がりました。
「人間よ、すぐに立ち去りなさい! 地上の世界に帰るのです!」
 西王母の言葉に、若者は言いました。
「嫌だ! 例え人間であっても、天女はわが妻。絶対に帰るものか!」
 しかし大河の流れは速くて、渡る事が出来ません。
 すると、子どもたちが言いました。
「そうだ、ひしゃくで川の水をすくい取ろうよ」
「よし、そうしよう」
 若者と二人の子どもたちは、大河の水を一杯一杯すくい始めました。
 これを見た天上の神さまが、若者たちに言いました。
「そなたたちの、天女を想う愛情は素晴らしい。よって一年に一夜だけ、そなたたちが会う事を許してやろう」
 こうして天女と若者たち親子は、毎年七月七日の夜にだけ会う事が出来る様になったのです。

 今でも天の川をはさんで、若者である『彦星』と、天女である『織姫星』を見る事が出来ます。
 その『彦星』の隣に小さな二つの星が並んでいますが、その二つの星が二人の子どもだと言われています。

おしまい

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