福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話
お百姓と木
あるお百姓(ひゃくしょう)の畑に、一本の木が生えていました。
この木は少しも実がならない木で、ただ、うるさくさえずるスズメや、やかましいセミたちの宿になっているだけでした。
「こんな木は、何の役にも立たない。切り倒してしまおう」
と、お百姓はオノを持ってきて、
「ガーン」
と、切りつけました。
すると、セミたちとスズメたちは、
「お願いです。この木を切り倒さないで下さい。ぼくたちのお宿なのですから。どうか、このままにしておいて下さい。ぼくたちがここで歌を歌えば、あなただって楽しいでしょう」
しかしお百姓は、セミやスズメの願いなどおかまいなしに、またオノを振り上げて、
「ガーン」
もう一度、
「ガーン」
と、切りつけました。
ところが、木の幹のさけたところを見ますと、そこにはミツバチの巣があって、ハチミツがたっぷりたくわえられていました。
お百姓はニッコリ笑うと、そのハチミツをおいしそうになめました。
そしてオノを放り出して、それからというものは、この木を大切にしました。
こんな風に、自分には興味のない事でも、それが自分の得になると分ると、すぐに考えをかえる人がいます。
おしまい
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