福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうのイソップ童話
キツネとハリネズミ
ギリシャのエーゲ海の島のサモスで、一人の政治家が死刑をいいわたされたときに、イソップがその命を助けようとして、こういう話をしました。
「キツネが川をわたろうとするときに、流されて、がけの岩のあいだにはさまりました。そこから出ることができず、長いあいだ苦しんでいますと、ダニがたくさんたかりました。そこへやってきたハリネズミが、それを見て気のどくにおもい、ダニをとってあげようかといいますと、キツネはとらずにおいてもらいたいといいました。ハリネズミがどうしてかと聞きますと、『こいつらは、わたしの血を、もう、たくさんのんだから、あとはたいして吸わないが、こいつらをとってしまうと、おなかのすいたべつのダニがきて、のこりの血をのんでしまうだろう』と、いいました」
それからイソップは、言葉をつづけていいました。
「ところで諸君。この政治家は、この先、もう害をくわえません。なぜなら、金持ちになっているからです。ところが、諸君がこの人を殺せば、ほかの貧乏なやつがやってきて、諸君の国のお金をこっそりつかってしまいます」
イソップの話しに感心した人たちは、その政治家をゆるしてやることにしました。
権力を持った人は、まず自分のためにはたらき、自分がじゅうぶん力をつけた後で、人のためにはたらくことを、このお話しはおしえています。
おしまい
|