お話し きかせてね <日本昔話朗読> 福娘童話集
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福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読

アワの長者
イラスト たつよ 提供 らくがきの日常

白い馬(アワの長者)
静岡県の民話静岡県情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
馬の折り紙うま   馬の顔の折り紙うまのかお

♪音声配信(html5)
朗読者 : ゲスト参加

 むかしむかし、ずーっとむかしのむかし話だよ。
 ある村に、働き者じゃが、貧しい暮らしをしている男がおりました。
「ああーっ、腹へったなー。腹いっぱい飯食ってみてえなあ〜」
 いつも腹をすかせている男の見る夢は、食べる夢ばっかりだった。
 ある晩のこと、男は真に不思議な夢を見た。

アワの長者

 荒地の果てからやってきた、白い一頭の馬。
 馬は光に包まれ、まぶしいほどの白さじゃった。

アワの長者

 馬は、ずっしりとよく実った金色のアワの穂を、美味しそうに食べている。
 じっと見つめていると、白い馬は急に首を振った。
 口元からポーイと飛んだアワの穂は、空中でクルクルと舞ってキラキラ金色に輝きながら、男の前に落ちてきた。

アワの長者

「あっ、夢か、夢! 何という夢じゃ。金のアワ。それに神々しい白い馬、神さまが現れたあの荒地は」

アワの長者

 夢から醒めた男は、あの白い馬が立っていた荒地は、自分が一度行ったことのある場所だと気付いた。
 朝が来るのを待ってさっそく出かけ、見覚えのある、その荒地にたどり着いた。

アワの長者

「ここだ、間違いない。夢の場所とおなじだ。・・・あっ!」
 驚いたことに、荒地の果てからアワの穂をくわえた夢で見た白い馬が、男に向かって歩いてきた。
 そしてくわえていた、その金のアワの穂を男に渡した。

アワの長者

「ああ、ありがたい。きっとこれは、この荒地を耕して、アワをうえなさいという、神さまのお告げにちがいない」
 男はそう信じて、そこの荒地を耕しはじめた。

アワの長者

 春を待って、種をまき。
 夏、照りつけるお日様。

アワの長者

 畑に這いつくばって、せっせと草を取った。

アワの長者

 秋になると、男の植えたアワの穂は重く実り、あたり一面金色に輝いて波打った。
大豊作だ。
 それを売りさばいた男は、たちまち大金持ちとなって「アワの長者」と呼ばれた。
 それから何年か経ったある年。

アワの長者

 村はまた、ひどい飢饅にみまわれた。
 これまでにない厳しい寒波が襲って、子供たちは腹を空かして寒さにおびえ、泣きわめいた。
 村の者は集まって、相談した。

アワの長者

「アワの長者さまに、おねがいしてみるか」
「そうだそうだ、あそこの蔵には、山ほどアワでもなんでも仕舞い込んである。むかしはわしらと同じ貧乏だった長者さまだ。助けてくれるに違いない。」
 そう話がまとまると、皆して長者さまのお屋敷に詰め掛けた。
 散々頭下げてお願いすると、それまで黙って聞いていた長者さまは一言大声を出した。

アワの長者

「うるさい! 聞きとうない! アワは一粒もない! 無断で蔵を開けたら、アワが無くて泡食うぞ! わかったか! さっさと出て行け!」
 皆が帰った、その夜のこと。
「こら、人の屋敷の土壁に何ということをする!」

アワの長者

 村の衆は、壁から、床下から、所かまわず、隠し込んだアワをガリガリこさぎだした。

アワの長者

 長者は、村の衆がやることは高がしれてるとたかくくって眠り込んだ。
 カリカリカリ、カリカリカリ
 音は、蔵から聞こえてきた。
「なんじゃ、なんじゃ、村の盗人だな!」
「あわわわわああ!」
 長者は気を失って、へたり込んでしまった。

アワの長者

 カリカリカリ、カリカリカリ
 忙しくアワを食べていた何万匹ものネズミたちが、急に静かになったと思うと、いきなり、どっーと音を立てて、

アワの長者

 蔵も御殿のようなお屋敷も、もろとも崩れ落ちた。

アワの長者

 立ち上る土煙が収まると、廃墟となった広場に何万というネズミたちが、ひとかたまりに集まった。
 そうして光に包まれ、金色のアワの穂をくわえた白い馬が姿を現した。

アワの長者

 やがて白い馬は、前足をそろえ、蹴るように高く上げると、ゆっくりと空へ駆けのぼっていった。

アワの長者

「ああっ、あの白い馬、夢の中の神さまの馬だ。」
 人の苦しみをかえりみなかった長者は、全てをなくして、やっと自分の愚かさに気付いた。
「泡食った長者」は改心して、皆と残ったアワを分けあった。

アワの長者

 それからというもの男は、村の皆とせっせと荒地を耕し、助け合って仲良く暮らしたんだと。

 めでたし、めでたし。

おしまい

※ このお話しは福娘童話集の「アワの長者」を元に、ラジオNIKKEI様主催の「全国10都市横断 親と子のトークライブショー 第10回 常田富士男 民話の世界」で配布用CDに収録された朗読で、朗読者は「まんが日本むかしばなし」のナレーターで有名な常田富士男さんです。

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