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ホジャおじさんのこの世の終わり

ホジャおじさんのこの世の終わり
トルコの昔話トルコの情報

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朗読 : 哲也  

 むかしむかし、トルコの国に、ナスレッディン・ホジャと言う、とても変わった人がいました。
 このホジャおじさんには、我が子の様に可愛がっている一匹の子ヒツジがいました。
 ある日の事、いたずら好きな若者が、この子ヒツジに目をつけて仲間に言いました。
「ホジャをうまくだまして、あの子ヒツジを料理して食う事にしようぜ」
「そりゃあ賛成だ。だが、誰がホジャをだますんじゃ? あいつはあれで、なかなかの知恵者じゃぞ」
「まかしとけ! そいつはこのおれが引き受けた。以前の恨みを晴らしてやる」
 いたずら好きな若者は、そう言いました。
 実はこの若者、子どもの頃にホジャおじさんと『だまし勝負』でだまされた少年です。
 そして若者たちはホジャおじさんの所へ行くと、まじめな顔で言いました。
「のう、ホジャ。お前は知ってるか?
 町の聖者さんの話だと、あと二、三日で、この世の終わりが来るそうじゃ。
 どうせ世の終わりが来るなら、今のうちに良い思いをしておいてはどうだ?」
「おお、この世の終わりなら、確かに良い思いをせんとな」
「じゃろう。そこでさっそくじゃが、みんなでお前の子ヒツジを食う事にせんか?」
「それは駄目じゃ! こいつを食うなんて、とんでもない!」
 ホジャおじさんは断りましたが、周りからみんなが頼むので、仕方なくホジャおじさんも承知して、明日、若者たちに子ヒツジをごちそうする事にしたのです。
 次の日、若者たちがホジャおじさんの家にやって来ると、さっそくホジャおじさんが料理のたき火を始めました。
 それを見た若者たちは大喜びで、
「よし、料理が出来るまで、みんなで遊ぶとしよう」
と、上着を脱ぎ捨てて、遊び始めました。
 しばらくすると料理の良い匂いがしてきたので、若者たちはたき火の周りに集まって来ました。
 ところが、どうでしょう。
 さっき脱ぎ捨てた上着が、どこにも見当たりません。
 見ると、上着はたき火の中で黒こげになっています。
「誰だ! 誰がやったんじゃ!」
 すると、ホジャおじさんが言いました。
「わしだ。それがどうかしたのか?」
「どうかしただと? もうすぐ寒い冬だぞ。上着がなくては冬が過ごせん。どうしてくれるんだ!」
 若者たちが詰め寄ると、ホジャおじさんは涼しい顔で言いました。
「みんな、何をそんなに怒っておるんだ。明日はこの世の終わりじゃろ。明日で終わるのに、冬が来るはずないだろうが」
「そっ、それは・・・」
 若者たちは、何も言い返せませんでした。

おしまい

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