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2月3日の世界の昔話
オオカミと七匹の子ヤギ
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むかしむかし、あるところに、やさしいお母さんヤギと、七匹の子ヤギたちが住んでいました。
ある日のこと、お母さんヤギがいいました。
「おまえたち、お母さんは用事で出かけてくるから、ちゃんとるすばんをしているのですよ。それから、さいきんは悪いオオカミがいるから、用心するのですよ」
「お母さん、オオカミって、こわいの?」
「そうだよ。なにしろ、ヤギを食べてしまうのだから」
「あーん、こわいよー」
「大丈夫。家の中にいれば大丈夫ですよ。オオカミはガラガラ声で黒い足をしているから、そんなのがお母さんのふりをしてやってきても、けっして家の中に入れてはいけませんよ」
「はーい、わかりました。では、いってらっしゃい」
子ヤギたちはお母さんヤギを見送ると、玄関(げんかん)のドアにカギをかけました。
さてしばらくすると、オオカミがやってきて、玄関の戸をたたいていいました。
「あけておくれ、お母さんだよ」
すると、子ヤギたちがいいました。
「お母さんは、そんなガラガラ声じゃないよ」
「そうだ、そうだ。おまえはオオカミだろう!」
(ちっ、声でばれたか)
そこでオオカミは、声がきれいになるというチョークを食べて、またやってきました。
「あけておくれ、お母さんだよ」
「あっ、お母さんの声だ」
子ヤギたちは玄関にかけよりましたが、ドアのすき間から見えている足がまっ黒です。
「お母さんは、そんな黒い足じゃないよ」
「そうだ、そうだ。おまえはオオカミだろう!」
(ちっ、足の色でばれたか)
そこでオオカミは、パン屋さんをおどかして、小麦粉(こむぎこ)で足を白くさせました。
「あけておくれ、お母さんだよ」
声もお母さん、ドアのすき間から見える足もまっ白です。
「わーい、お母さん、おかえりなさい」
子ヤギたちがドアをあけると、オオカミが飛び込んできました。
「ウワォー、なんてうまそうな子ヤギだ」
みんなはビックリして、いそいでかくれました。
一匹目は、つくえの下。
二匹目は、ベットの中。
三匹目は、火の入ってないストーブの中。
四匹目は、台所の戸だなの中。
五匹目は、洋服ダンスの中。
六匹目は、洗濯おけの中。
七匹目は、大きな時計の中です。
「グフフフ。かくれてもむだだぞ。みんなさがして食ってやる」
オオカミはつぎからつぎへと子ヤギを見つけて、パクリパクリとのみこんでしまいました。
「フーッ。うまかった。さすがに六匹も食べると、お腹がいっぱいだわい」
おなかがいっぱいになったオオカミは、草原の木の下でよこになると、グーグーとひるねをはじめました。
まもなく、お母さんヤギがもどってきましたが、家の中を見てビックリ。
子どもたちの名前を次々によびましたが、へんじはありません。
でも、最後に末っ子の名前をよぶと、末っ子の子ヤギが返事をしました。
「お母さん、ここだよ」
大きな時計の中にかくれていて末っ子だけが、ぶじだったのです。
末っ子の子ヤギから話を聞いたお母さんヤギは、おんおんとなきました。
なきながら外へ出ていくと、オオカミがすごいいびきをかいてねているではありませんか。
そして、そのふくれたおなかが、ヒクヒク、モコモコとうごいています。
「もしかして、子どもたちはまだ生きているのかも」
そこでお母さんヤギは、末っ子にハサミと針と糸を持ってこさせると、ハサミでオオカミのおなかを切ってみました。
するとどうでしょう。
子ヤギたちが一匹、二匹と、みんな元気にとびだしてきたのです。
「わーい、お母さんだ。お母さんが助けてくれたんだ!」
子ヤギたちはお母さんヤギにだきついて、ピョンピョンとびあがってよろこびました。
お母さんヤギも大よろこびです。
でも、すぐに子ヤギたちにいいました。
「おまえたち、すぐに小石を集めておいで。この悪いオオカミに、おしおきをしなくてはね」
そして、からっぽになったオオカミのおなかの中に、みんなで小石をつめこむと、お母さんヤギが針と糸でチクチクとぬいあわせてしまいました。
さて、それからしばらくたったあと、やっと目をさましたオオカミは、のどがかわいて近くのいずみに行きました。
「ああ、おなかが重い。少し食べ過ぎたかな?」
オオカミがいずみの水を飲もうとしたとたん、お腹の石の重さにバランスをくずして、オオカミはそのままいずみにドボンと落ちてしまいました。
「わぁ、わぁ、助けてくれー! おれは泳げないんだ! だれか助けてくれー!」
オオカミは大声で助けをよびましたが、きらわれもののオオカミはだれにも助けてもらえず、そのままいずみのそこにしずんでしまいました。
おしまい