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ジメリのお山
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むかしむかし、あるところに、お金持ちと貧乏(びんぼう)の、ふたりの兄弟がいました。
あるとき、貧乏のほうの男が山奥で仕事をしていると、むこうのほうから人相(にんそう)の悪い男たちが十二人もやってくるのが目につきました。
「あれは、きっとドロボウにちがいないぞ。つかまったらたいへんだ」
貧乏な男は荷物をやぶのなかヘかくすと、じぶんは木によじのぼって身をかくしました。
十二人の男たちは、近くのはげ山のまえヘいくと、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、ひらけ!」
と、さけびました。
そうするとたちまち、はげ山はまんなかからまっぷたつにさけました。
そしてそのなかへ、十二人の男たちは入っていきましたが、みんなが入ってしまうと、山はひとりでにとじてしまいました。
ところがしばらくすると、山がまた口をあけて、なかからおもたいふくろをしょった十二人の男たちがでてくるのです。
そして男たちが、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、しまれ!」
と、いうと、山はピッタリとあわさって、入り口は消えてしまいました。
やがて十二人の男たちは、どこかヘいってしまいました。
十二人の男たちのすがたがすっかり見えなくなると、貧乏な男は木からおりてきて、十二人の男たちのまねをしてみました。
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、ひらけ!」
すると、さっきと同じように山は口をあけました。
そこで貧乏な男が中に入ってみると、なんと中には銀貨や金貨がビッシリとつまっており、そのうしろには真珠(しんじゅ)や宝石が山のようにつみあげてあるのです。
「これはすごい!」
貧乏な男は、金貨をポケットにつめこむと、いそいで外に出ました。
そして、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、しまれ!」
と、いって山の入口をしめると、大急ぎで家に帰ったのです。
貧乏な男はこの金貨で、家族にパンや服を買ってやりました。
山から持ってきた金貨は少しだけだったので、金貨はすぐになくなってしまいました。
そこで貧乏な男は、お金持ちのお兄さんのところへ行くと、大きなますをかりてきて、こんどはそのます一杯に金貨をとってきました。
貧乏な男は、その金貨であたらしい家を買いました。
またしばらくして、貧乏だった男は金持ちのお兄さんのところに、またますをかりに行きました。
ところが、弟が急に家を買ったのをふしぎに思ったお兄さんは、ますのそこにタールをぬっておいたのです。
やがてかえってきたますを見てみますと、ますのそこに金貨が一枚はりついているではありませんか。
お兄さんは、さっそく弟のところヘでかけていくと、
「このますについていた金貨は、どこで手に入れたんだ! 白状しないと、役人にうったえてやるぞ」
と、おどかしました。
そこで弟は、今までのことをすべて話しました。
それを聞いたお兄さんは、ウマに荷車をつないで山にやってきました。
弟のような少しずつではなく、荷車いっぱいの金貨を持って帰ろうと思ったのです。
さて、山のまえヘきて弟に教えてもらったとおり、
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、ひらけ!」
と、よびますと、山が口をあけたので、お兄さんは入っていきました。
「おおっ、これはすごい。宝の山だ!」
お兄さんは夢中になって、荷車に金貨をつめこみました。
ところが、あんまり宝物に夢中になったため、山の入口を開く言葉を忘れてしまったのです。
「なんだったかな? バゼムの山や、バゼムの山や、ひらけ!」
言葉がちがうので、山の開きません。
「ジメリの山や、ジメリの山や、ひらけ!」
やっぱり言葉がちがうので、山は開きません。
あせったお兄さんは、思いつく限りの言葉をためしてみましたが、どれも言葉がちがうので、山は開きませんでした。
やがて夕方になると、入口の外から声がしました。
「ゼムジの山や、ゼムジの山や、ひらけ!」
山の入口がパックリ開いて、十二人のドロボウが入ってきました。
そしてお兄さんのすがたを見つけると、カラカラとわらいました。
「こそドロめ、とうとうつかまえてやったぞ。かくごしろ!」
ビックリしたお兄さんは、いっしょうけんめいに命ごいをしたのですが、ドロボウたちはその首をちょんぎってしまいました。
このお話しは、有名なアラビアンナイト「アリババと40人と盗賊」のグリム版です。
おしまい
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