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死神の名づけ親
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むかしむかし、まずしい男に子どもが生まれた。
男は道で出会った者に、子どもの名づけ親になってもらおうと考えました。
まず会ったのは、おしりにしっぽのはえた悪魔(あくま)です。
しかし男は、悪魔は人をだますからいやだと、ことわりました。
次に会ったのは、骨だけの死神です。
死神は金持ちでも貧乏でも、公平に死をあたえる神です。
そこで男は、死神に名づけ親をたのみました。
たのまれた死神は、名づけた子どもを裕福(ゆうふく)にしてやると約束しました。
そしてその子が大きくなると、あのときの死神が現われたのです。
死神はその子を森に連れていき、ある薬草を指さしました。
「おまえにプレゼントをしてやろう。医者になるんだ。おまえが病人をみるときには必ずわたしがいてやろう。わたしが病人の頭の方にいたら、この薬草で治せるだろう。しかし、足の方にいたら助からないからな」
しばらくすると、その若い男は名医といわれるようになりました。
そんなある日、王さまが病気になったのです。
さっそくよばれて男が行くと、死神は王さまの足の方に立っていました。
このままでは、王さまは死んでしまいます。
男は、何か死神をだます方法はないかと考え、ある方法を思いつきました。
「王さまをベッドごと持ち上げて、頭と足を逆にしてください」
こうしておいて、あの薬草を飲ませると、王さまの病気はたちどころになおってしまいました。
その日の夜、死神は男の所にやってきて、
「今度、あんなことをしたらただではすまない。二度とするなよ」
と、いいました。
しばらくすると、今度はお姫さまが病気になりました。
悲しんだ王さまは、姫の病気をなおした者に姫を嫁にやるといったのです。
そこで、また男がお城にやってきました。
見ると、死神はまた足の方にいます。
死神の言葉をわすれたわけではありませんが、男はお姫さまの美しさに目がくらんで、王さまをなおしたのと同じ方法でお姫さまの病気をなおしたのです。
その日の夜、死神は男をひっつかむと、ある洞窟(どうくつ)の中へ引っぱっていきました。
そこには、たくさんのローソクがならんでいます。
「どうだ、きれいだろう。これが生命(せいめい)のローソクだ。この太くて長いのは元気な若者のもの。この小さいのは年寄りのものだ」
男は、自分のを見せてくれるようにたのみました。
するとそれは、今にも消えそうな小さいローソクだったのです。
「本当は、お前のローソクはまだまだ太くて長いものだったのだが、王と姫を助けてやったために、こんなに小さくなってしまったのだ」
「お願いです。もう、あんなことはしません。どうか、大きなローソクをつぎたしてください」
男が泣いてたのむので、死神は大きなローソクを持ってきました。
そして火をうつすようなふりをして、小さな男のローソクを消してしまったのです。
そのとたん、男は死んでしまいました。
おしまい
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