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ハエの城
ロシアの昔話 → ロシアの情報
むかしむかし、あるところに、ブンブンバエというハエがいました。
ある日の事、ブンブンバエは、お百姓のおかみさんが大事にしているつぼをひっくり返してしまいました。
幸いつぼは空っぽでしたが、少し前まで甘いクリームが入っていたらしく、つぼの中はとてもいいにおいがします。
「何だろう。この素晴らしい香りは」
ブンブンバエは、つぼのすみに残っていたクリームをぺろりとなめました。
「とっても甘いや! 気に入った。ここを、ぼくの城にしよう」
するとそこへ、ピョンピョンノミが飛んで来て尋ねました。
「この素敵な城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエですよ。きみは誰だい?」
「あたしは、ピョンピョンノミのホップラ・ポだよ。ピョンとはねて、城に飛び込んでもいいかい?」
「いいですとも。お客さまは大歓迎ですよ」
するとそこへ、今度はブーンブーンと蚊(か)が飛んできました。
「この素晴らしい城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポだよ。きみは誰だい?」
「おれは、ブーンブーン蚊のピープスだよ。中に入れておくれよ」
「いいですとも。お客さまは大歓迎ですよ」
するとそこへ、今度はゴソゴソとゴキブリがやってきました。
「この素晴らしい城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポと、ブーンブーン蚊のピープスさ。きみは誰だい?」
「わしはゴソゴソゴキブリのシワンポだ。わしも仲間に入れておくれよ」
「いいですとも。お客さまは大歓迎ですよ」
こうして四匹の虫は、つぼの城の中で暮らし始めました。
すると今度は、チューチューとネズミがやってきました。
「この素晴らしい城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポとブーンブーン蚊のピープスと、ゴソゴソゴキブリのシワンポだよ。きみは誰だい?」
「おいらは、チューチューネズミのデブチンです。おいらも仲間に入れておくれよ」
「いいですとも。お客さまは大歓迎ですよ」
すると今度は、チョロチョロとイタチがやってきました。
「この素晴らしい城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポとブーンブーン蚊のピープスと、ゴソゴソゴキブリのシワンポと、チューチューネズミのデブチンですよ。きみは誰だい?」
「あっしは、チョロチョロイタチのチーゼルだよ。あっしも仲間に入れておくれよ」
「いいですとも。お客さまは大歓迎ですよ」
すると今度は、フワリフワリとウサギが飛んで来ました。
「この素晴らしい城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポとブーンブーン蚊のピープスと、ゴソゴソゴキブリのシワンポと、チューチューネズミのデブチンと、チョロチョロイタチのチーゼルですよ。きみは誰だい?」
「あたいは、フワリフワリウサギの鼻ピクピクですよ。あたいも仲間に入れておくれよ」
「いいですとも。よっと狭いけれど、お客さまは大歓迎ですよ」
こうしてハエとノミと蚊とゴキブリとネズミとイタチとウサギの七匹は、つぼの中で賑やかに暮らしました。
そこへ今度は、ズシンズシンとクマがやってきました。
「やあ、この小さな城に住んでいるのは、誰だい?」
「ブンブンバエと、ピョンピョンノミのホップラ・ポとブーンブーン蚊のピープスと、ゴソゴソゴキブリのシワンポと、チューチューネズミのデブチンと、チョロチョロイタチのチーゼルと、フワリフワリウサギの鼻ピクピクですよ。きみは誰だい?」
「おれさまは、ズシンズシンクマの力持ちだ。おれさまも仲間に入れておくれよ」
「駄目だよ! 中はいっぱいで、とても入れないよ!」
つぼの中のみんなはそう言ったのですが、クマはそれに聞かずに無理矢理入ろうとして、大きな前足でみんなをつぼごと踏みつぶしてしまいました。
おしまい
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