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福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの世界昔話
イラスト Smile STATION
北風のくれたテーブルかけ
ノルウェーの昔話 → ノルウェーの国情報
むかしむかし、ハンスという少年が、お母さんと一緒に住んでいました。
ある日のこと。
「ハンス。パンを焼くから、粉(こな)を持ってきて」
「はーい」
お母さんに頼まれたハンスが、小屋から粉を持ってくると、
ピューーーッ!
と、北風が粉を吹き飛ばしてしまいました。
「あっ! 粉を返せえ!」
ハンスが北風を追いかけていくと、雪の野原に氷のお城がたっていました。
このお城は、北風のお家です。
ハンスは、北風のお城に向かって言いました。
「北風さん、ぼくの粉を返してよ!」
すると、お城の中から北風が答えました。
「困ったな。粉はないから、代わりにこのテーブルかけをやろう。『テーブルかけよ、うまいごちそうを出してくれ』と言うと、そのとおりになるぞ」
「わあ、どうもありがとう」
帰りは夜になったので、ハンスは宿屋(やどや)に泊まってさっそくテーブルかけをためしてみました。
「テーブルかけよ、うまいごちそうを出してくれ」
するとテーブルかけの上に、ズラリとごちそうがならんだのです。
「わあ、すごい、すごい!」
さて、この様子をドアのすき間から見ていた、宿屋のおかみさんは、
「まあ、あのテーブルかけがあれば、毎日ごちそうが食べられるねえ」
と、考え、夜中にこっそりと、ハンスのテ一ブルかけを、ただのテーブルかけとすりかえたのです。
家に帰ったハンスは、お母さんにごちそうを出してあげようと思い、テーブルかけに言いました。
「テーブルかけよ、うまいごちそうを出してくれ」
ところがテーブルかけは、ごちそうどころか、パン一切れも出してくれません。
ハンスはもう一度、北風のところへ出かけました。
「北風さん、テーブルかけは返すから、粉を返してよ」
「よわったな、ではこのヒツジをやろう。『ヒツジよ、ヒツジ、金貨をはき出せ』というと、そのとおりになるぞ」
「わあ、どうもありがとう」
帰りはやっぱり、この前の宿屋に泊まって、さっそくためしてみました。
「ヒツジよ、ヒツジ、金貨をはき出せ」
するとヒツジは、パラパラパラパラと、いくらでも金貨をはき出しました。
この様子をドアのすき間から見ていた、宿屋のおかみさんは、
「まあ、あんなヒツジがいたら、わたしゃ、大金持ちだよ」
と、夜中にこっそり、ハンスのヒツジを、ただのヒツジとすりかえたのです。
家に帰ったハンスは、お母さんに金貨を出してあげようと思いました。
「ヒツジよ、ヒツジ、金貨をはき出せ」
ところがヒツジは、金貨を一枚も出さずに、ただ、メエメエとなくばかりです。
ハンスは、もう一度北風のところへいきました。
「北風さん、ヒツジは返すから、粉を返してよ」
「では、つえをやろう。『つえよ、つえ、悪い奴をぶんなぐれ』といえば、そのとおりになるぞ」
「わあ、どうもありがとう」
その日もハンスは、この前の宿屋にとまりました。
つえをしっかり抱いてベッドに入ると、おかみさんが入ってきて、
「このつえもきっと、魔法のつえだろう。今度もただのつえとすりかえてやろう」
おかみさんがつえを抜き取ろうとしたので、ハンスはいいました。
「つえよ、つえ、悪い奴をぶんなぐれ!」
するとつえはヒラリと飛び上がって、おかみさんをバンバン、ビシビシとたたきました。
「ヒェェェー! テーブルかけもヒツジも返すから、許しておくれー!」
おかみさんは泣きながら、ハンスにテーブルかけとヒツジを返しました。
「さあ、お母さんにごちそうと金貨を出してあげよう。おまけにこのつえがあれば、ぼくとお母さんはこわいものなしさ」
こうして、テーブルかけとヒツジと取り返したハンスは、北風にもらった三つの宝物のおかげで、お母さんと幸せに暮らしたのでした。
おしまい
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