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12月17日の世界の昔話
あわれな悪魔
スウェーデンの昔話 → スウェーデンの国情報
むかしむかし、ある村にお百姓(ひゃくしょう)がいました。
お百姓は、一匹のウシを飼っていて、春になるとそのウシを牧場(ぼくじょう)に連れて行き、おいしい草をたくさん食べさせるのです。
そして、
「神さま。いつもわしらをお守りくださって、ありがとうございます。今年もこのウシに、草をたっぷり食べさせてやってくださいまし」
と、お祈りしました。
それを一匹の悪魔(あくま)が、しげみのかげから聞いていました。
「ふん。人間てやつは、なんでもかんでもうまくいくと、神さまにお礼を言う。ところがだ、悪い事がおきると決まって、おれたち悪魔のせいにする。・・・くやしいな、おれみたいにいい悪魔もいるっていうのに。ちくしょうめ、見ていろ!」
それから、三日がたちました。
お百姓のウシが沼(ぬま)に落ちて、出られなくなっています。
それを見ると、お百姓は、
「ひどい事をしやがる! また、悪魔のやつのイタズラだな!」
と、怒りました。
「やっぱり、おれの思っていたとおりだ」
悪魔は、しげみのかげからつぶやきました。
お百姓はウシを引っ張り出すために、すぐさま手伝いの人を呼びに行きました。
「よし、いい事をするチャンスだ!」
悪魔は、しげみの後ろから、そっと出てくると、動けなくなったウシを助けてあげました。
「へっへっへっ、今度こそ、おれもお礼を言われるだろう」
と、ニコニコ顔です。
やがて、お百姓が帰ってきました。
ウシが沼からあがっているのを見ると、お百姓は大喜びで言いました。
「おおっ、神さま。ウシを引っ張りあげてくださって、ありがとうございます」
おしまい