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イラスト Smile STATION
クリスマスの鐘
アメリカの昔話 → アメリカの国情報
クリスマスの鐘の絵本
むかしむかし、アメリカのある町に、大きな教会がありました。
教会には、天にそびえる高い塔があって、立派な鐘(かね)がつるされています。
その鐘には、『クリスマスの夜にだけ鳴る』という、不思議な言い伝えがありました。
ところがまだ一度も、この鐘が鳴る音を聞いた人はありませんでした。
クリスマスが近づくと、町の人たちは塔を見あげて話し合います。
「今年こそは、あの鐘の鳴る音が聞けるかなあ?」
「わしは八十年も生きているが、まだ一度も聞いたことがない。なんでも、わしのじいさんが子どもの頃に聞いたそうだが、それは素晴らしい音色だったそうだ」
「どうすれば、あの鐘はなるのだろう?」
「神さまに贈り物をすれば、鳴るという話だよ」
さて、この町のはずれの小さな村に、ペドロという男の子と弟がいました。
ある日、ペドロは弟に言いました。
「クリスマスの教会って、とってもにぎやかなんだってさ」
すると弟は、目を輝かせてせがみました。
「わあ、ぼく、行ってみたいなあ」
「よし、連れて行ってあげるよ」
ペドロは、弟と約束しました。
そして、まちにまったクリスマスの前の夜。
ペドロと弟は、しっかりと手をつなぐと町へ向かいました。
町の入り口までいった時、二人は女の人が倒れているのを見つけました。
「どうしたのかな? この人、動かないよ。お兄ちゃん、どうしよう?」
「このままほうっておいたら、凍え死んでしまう。困ったなあ?」
あたりには、だれもいません。
ペドロはポケットから銀貨を取り出すと、弟に差し出しました。
「この銀貨は神さまへの贈り物だよ。ぼくはこの人を助けるから、一人で行っておいで」
「えっ、ぼく、一人で行くの? お兄ちゃんだって、あんなに行きたがっていたじゃないか」
「いいんだ。さあ、行っておいで」
弟はしかたなく、一人で町の中へ入っていきました。
教会の中は、たくさんの人でにぎわっていました。
どの人も神さまへの立派な贈り物を、得意そうに持っています。
キラキラとまぶしく光る宝石、山のような金貨、立派な銀食器・・・。
だれもが素晴らしい贈り物をして、鐘を鳴らそうと考えていました。
けれど、鐘は鳴りません。
「今年こそ、鐘を鳴らしてみせるぞ!」
最後に王さまも、命の次に大切にしている金の冠(かんむり)をささげました。
(さすがに、これで鐘がなるだろう)
みんなはジッと、耳をかたむけました。
でも、高い塔の上は、シーンとしずまり返ったままです。
「ああ、なんと、王さまの金の冠でもだめなのか」
「きっと、あの鐘は永久(えいきゅう)に鳴らない鐘なんだ」
「そうだ。そうにちがいない」
人々があきらめて帰りかけた、その時です。
♪カローン、コローン、カローン、コローン・・・・・・。
とつぜん、塔から美しい鐘の音が響いてきたではありませんか。
「あっ! 鳴った。とうとう鳴ったぞ!」
「なんて、美しい音色なんだ」
「それにしても、鐘を鳴らすほどの贈り物をしたのは、いったいだれだろう?」
王さまをはじめ、人々はいっせいに振り返りました。
するとそこにはペドロの弟が、はずかしそうにたっていました。
「ぼく、お兄ちゃんからあずかった銀貨を一枚、神さまにささげただけだよ」
弟は、そういったあと、
(お兄ちゃんの助けてあげた、あの女の人は、きっと大丈夫だろうな)
と、思いました。
素晴らしい贈り物というのは、高価(こうか)だからよいのではありません。
大した物ではなくても、贈る人の心がこもっていればよいのです。
メリークリスマス
おしまい
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