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クリスマスプレゼント
オリジナル童話 → 企画・制作:A'sf
それは、クリスマスの日のことでした。
小さな小さなねずみくんが、大きな大きな木の根元でなにかをさがしていました。
冷たい風が木々をゆらし、枯葉が舞う森の中なのに、ねずみくんときたら、あせっているのと、動き回っているせいで大汗をかいています。
「あれ〜、おかしいなあ〜、どこにいっちゃったんだろう〜」
ねずみくんは、ともだちのリスさんのおうちで今夜に開かれるクリスマスパーティーで、リスさんや森のみんなにあげるクリスマスプレゼントをどこかにうっかり落としてしまったのでした。
「リスさん、クマくん、きつねさん、コマドリちゃん、みんなにあげるプレゼント。あれがなきゃ、パーティーに行けないよ〜!」
どれだけさがしても、プレゼントは見つかりません。
風に吹かれて木から落ちてきた葉っぱも、じめんにごろごろしている石ころも、小さなねずみくんにとっては自分の体よりもおおきくて、だから、それをどかして下を覗き込むのも一苦労です。
ねずみくんは途方にくれて疲れ果て、とうとう泣き出してしまいました。
「うえ〜ん、うえ〜ん、ずっとずっと楽しみにしてきたクリスマスなのに〜。
去年もおととしも僕ったら、いっつもクリスマスに風邪ひいちゃって、どこにもおでかけできなかったんだ〜。
今年は大好きなリスさんが僕を招待してくれたのに〜。
毎日ちゃんとお手てをあらって、うがいもちゃんとして、夜更かしだってしないで、がんばってきたのに〜。
ともだちみんなでいっしょにすごすクリスマスだったのに〜。
ぼくのドジ!
ぼくのおばか!
ぼくのあんぽんたん!
うえ〜ん!」
ねずみくんは、そのうち泣き疲れて大きな木の根っこのところで眠ってしまいました。
ねえねえ、ねずみくん、もうすぐ日が暮れますよ。
寒い森の中で眠ってしまうと、今年も風邪ひきクリスマスになってしまいますよ。
さて、ここはドングリの木に囲まれたリスさんのおうちです。
今夜のパーティーに招かれた森の仲間たちが一人、また一人と集まってきています。
「メリークリスマス! 今日はお招き、どうもありがとう!」
「みなさん、どうぞどうぞ、さあ、中に入って、暖かいミルクを飲んでください」
クマくん、きつねさんが揃い、リスさんもお料理の準備ができたみたいです。
「あとはコマドリちゃんとねずみくんね。二人が来たらパーティーをはじめましょう」
「コマドリちゃんはお母さんのお手伝いが済ませてから来るって言ってたから、そろそろだと思うんだけど、ねずみくんのやつ、今夜のパーティーをいちばん楽しみにしてたのに、なにやってんだろう? 遅いんじゃない?」
「へへ、あいつ、また今年も風邪ひいちゃって来れないんじゃないの?」
「あはは、そうかもね? 今頃ベッドでふうふう言ってるかもよ?」
と、そこへ、コマドリちゃんがやってきて、あわててこう言いました。
「みんな、たいへんよ! ねずみくんがすごいお熱なの!」
「あはは、やっぱりね」
「クマさん、きつねくん、なんで笑うの! こんな寒い夜に、あの大きな木の根っこのとこで、ねずみくん、苦しそうに倒れているのよ! 笑ってないで助けに行ってあげて!」
コマドリちゃんの真剣な表情に、リスさんもお料理の火を止めてクマさんときつねさんといっしょに、コマドリちゃんの案内でねずみくんが倒れている大きな木のところへ急ぎました。
コマドリちゃんは空を飛んで、リスさんは木の枝をつたってぴょんぴょんぴょん。
クマさんときつねくんは地面を走っていきました。
「ねずみくん! ねずみくん! しっかりしろ!」
「さあ、ぼくの背中にのっかれ!」
「わたしのおうちへ、はこびましょう」
みんなはねずみくんを、リスさんのおうちへつれていきました。
暖かい毛布の中で、きつねくんが池から持ってきたつめたい氷をおでこに乗せて、ねずみくんは眠っていました。
「う、う〜ん」
しばらくして、ねずみくんはようやく目を覚ましました。
「ここはどこ?」
「わたしのおうちよ。どうやら熱が少し下がったみたいね。だいじょうぶ?」
「おい、なんであんなとこに寝てたんだよ! 風邪ひくの、あたりまえだろう!」
「い、いや、その、実は今夜のクリスマスパーティーで、みんなにあげようと準備したプレゼントをどこかに落としちゃったんだ。それを探していたら疲れちゃって、いつの間にか眠っちゃったんだよ。でも、どうしてぼくはここにいるの?」
「コマドリちゃんが倒れているねずみくんを見つけて知らせてくれて、クマさんがここまで運んでくれて、きつねくんが氷を持ってきてくれたのよ」
「みんな、心配かけてごめんね」
「リスさんだって、きみの汗を拭いてあげたり、部屋を暖めるために暖炉にくべる落ち葉を集めたりしていたんだよ」
「あ、ありがとう」
「とにかく、こうしてみんなが揃えてよかったわ。ねずみくん、気をつけなきゃだめよ。」
「うん、ごめんよ。でも、みんなにちゃんとプレゼントをあげたかったなあ」
「もう気にするな。プレゼントもらったって、きみがひどい病気になっちゃったら、ちっとも楽しくないし嬉しくないよ」
「クマさん」
「あ、そうそう」
きつねさんが言いました。
「ねずみくん、君がそんなにむきになって探してた、おいらたちにくれるつもりだったプレゼントって、いったいなんだったんだい?」
「あ、わたしもしりた〜い! ねえ、おしえて!」
「うん、それはね」
ねずみくんが何かを言いかけたとき、リスさんがかわりに言いました。
「それは、来年のお楽しみにしましょう。なくしたプレゼントが何かを聞いたら、やっぱり欲しかったなあって、残念な気持ちになってしまうかもしれないでしょ? 来年こそは元気にパーティーに出席してもらって、その時に、きとんと披露してもらいましょう。」
「うん、それがいい! ねずみくん、来年はよろしくな!」
「うん! わかったよ! みんな楽しみにしててね! けっきょく今年も風邪ひきクリスマスになっちゃったけど、ぼく、みんなのおかげでとっても嬉しいクリスマスになったよ。ありがとう!」
「あ、そうだ! 来年のパーティーは、ねずみくんのうちでやろう!」
「え? どうして?」
「だって、そうすれば、もしまたねずみくんが風邪をひいても、ちゃんと出席できて、おいらたちみんなもぜったいにプレゼントがもらえるだろ?」
「そうだね! あっははは〜」
みんなが楽しく笑いました。
メリークリスマス!
おしまい
※ この「クリスマスプレゼント」のお話しと朗読は、以下の方々よりご提供を受けた、オリジナル作品です。
おはなしパタくん 2008年12月18日号
「クリスマスプレゼント」
作・演出:t-adachi (thin-p)
出演:山口真依
音楽:thin-p@A'sf
*Hark! The Herald Angels / Doug Boldt
*Deck The Halls / Doug Boldt
*Jingle Bells / Natalie Brown
(この3曲は Podsafe Music Network の提供です)
企画・制作:A'sf
おはなしパタくんへのリンクURL
http://patakun.cocolog-nifty.com/blog/
Doug Boldt へのリンクURL
http://music.podshow.com/music/producers/producerLibrary/
artistdetails.php?BandHash=f77d12dec5c4c4752490101e895672b7
Natalie Brown へのリンクURL
http://www.natalie-brown.com/
Podsafe Music Network へのリンク
http://music.podshow.com/
A'sf へのリンク
http://thin-p.air-nifty.com/
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