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7月19日の日本の昔話

びょうぶのトラ

びょうぶのトラ

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 一休さんのとんちの評判を聞いて、殿さまがお城に一休さんを招き入れました。
「さっそくじゃが、そこにあるびょうぶのトラを、しばりあげてくれぬか。夜中にびょうぶから抜け出して悪い事ばかりするので、ほとほと困っておったのじゃ」
 もちろん、ひょうぶに描かれた絵のトラが出てくるなんて、うそに決まっています。
 しかし、有名な絵描きが描いたのでしょうか、びょうぶに描かれたトラはキバをむいて、今にも襲いかかってきそうでした。
「本当に、すごいトラですね。それでは、しばりあげてごらんにいれます。なわを用意してください」
「おおっ、やってくれるか」
「はい。もちろんですとも」
 一休さんはそう言うと、ねじりはちまきをして腕まくりをしました。
 そして家来が持ってきたなわを受け取ると、一休さんは殿さまに頼みました。
「それでは、トラをびょうぶから追い出してください。すぐにしばってごらんにいれます」
 それを聞いた殿さまは、思わず言いました。
「何を言うか、びょうぶに描かれたトラを、追い出せるわけがなかろうが」
 すると一休さんは、にっこり笑って言いました。
「それでは、びょうぶからはトラは出てこないのですね。それを聞いて安心しました。いくら私でも、出てこないトラをしばる事は出来ませんからね」
 それを聞いて、殿さまは思わず手を叩きました。
「あっぱれ! あっぱれなとんちじゃ。ほうびをつかわすから、またくるがよいぞ」
 こうして一休さんは、たくさんのほうびをもらって、満足そうにお寺に帰りました。

おしまい

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