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10月23日の日本の昔話
化け上手
むかしむかし、あるところに、人を化(ば)かすタヌキが山にいて、とうげをこえる人がこまっていました。
あるとき、どきょうのある商人がウマに荷物をたくさんつんで、この山にさしかかりました。
「しめしめ、よいものがきた」
タヌキは喜んで、若い娘に化けました。
えっちらほっちらと、山を登ってきた商人は、娘を見てあやしみました。
「おかしいな、こんな山に娘が一人で。ははーん。こいつがいたすらタヌキじゃな。よし、ひとつこらしめてやれ」
そう思い、商人はそしらぬ顔で近づいて行きました。
そして、
「こらこらタヌキ、そんな下手くそな化け方じゃ、すぐにバレてしまうわい。わしはとなりの森のキツネじゃが、ほれ、よう化けとるじゃろうが」
タヌキはビックリして、商人を見ました。
(なるほど、ウマから荷物まで本物そっくりじゃ。こりゃ、わしの負けじゃ)
タヌキは商人に手をついて頭を下げると、
「キツネどん、わしにひとつ、その化け方を教えてもらえんじゃろうか」
と、たのんだのです。
「ええとも、ええとも。簡単じゃ。この化け袋さ入って呪文(じゅもん)をとなえたら、すぐに上手になれるだ」
そう言いながら、からっぽの袋の口を開けました。
「それだけでええのか?」
と、言いながらタヌキがその中へ入ると、商人はすぐに口をしっかりむすんで、
「ちいとばかし、ガマンするのじゃぞ、すぐに呪文さとなえて出してやるからな」
そして家へ帰ると、そのタヌキでタヌキ汁をこしらえて、家族みんなでフーフー言いながら、食べてしまいました。
おしまい