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1月23日の小話
カッパをつろう
とっても貧乏な男がいました。
あるとき、お金持ちの家にいっていいました。
「カッパがつれる良い場所を見つけました。でも、えさに肉がひとかたまりいります。カッパがつれたらおれいをさしあげますから、肉を分けてもらえませんか」
お金持ちは、カッパなら高く売れるとおもい、ひとかたまりの肉を貧乏な男にわたしていいました。
「わしも、カッパをつるところがみたいなあ」
すると、貧乏な男がいいました。
「木のうしろにかくれていてくださいよ。そして、けっしてしゃべってはいけません。カッパは人間の声をきくと、逃げてしまいますから」
川につくと、貧乏な男はお金持ちに気づかれないように、肉をふところに入れ、つり糸には肉の代わりに石をくくりつけて、ドボンと川に投げ込みました。
金持ちは木のうしろから声を出さないように見ていましたが、1時間もすると待ちきれなくなり、貧乏な男に、つい声をかけてしまいました。
「・・・まだ、つれないのか?」
すると貧乏な男がいいました。
「ああっ、今、カッパがえさに食いついたのに。人の声がしたから肉を取って逃げてしまった。もうだめだ」
そういうと、さっさとつりざおを片づけて、ふところに肉を入れたまま家に戻ってしまいました。
おしまい