福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 2月の江戸小話 > まんじゅうこわい
2月25日の小話
まんじゅうこわい
町内の若い者が二、三人より集まって、おしゃべりをしていますと、やせた、青白い顔の男が、はあはあと息をきらせて飛びこんできました。
「たっ、た、助けてくれ」
男は、ガタガタとふるえております。
「どうした、どうした」
みんなが、男を取りかこんでききますと、男は、
「うしろから、まんじゅう売りがやってくる」
「・・・?」
「じつは、おれはまんじゅうが、どうしても、こわくてこわくて。は、早く、どこかへかくしてくれ」
と、いうので、ひとまず物置にかくしてやりましたが、いたずらずきの一人が、
「どうもおかしなやつだ。ひとつ、いたずらをしてやろうじゃないか」
さっそく、まんじゅう屋からまんじゅうを買い、おぼんに山もりにつんで、物置の中へ入れると、戸をぴしゃりとしめて、おさえていました。
ところが、しばらくたっても、音ひとつしません。
「さては、こわがって、気を失ったかな」
と、戸をあけてみると、中の男は、まんじゅうをのこらず食べてしまい、口のまわりのあんこをべろべろなめています。
「あれっ? おまえをおどかしてやろうとおもったのに、食っちまうとは、どこがこわいんだ」
と、いうと、男は、
「今度は、お茶がこわい、お茶がこわい」
おしまい