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8月29日の小話
はっぱの手紙
たいへん、けちんぼうなだんながおりました。
ある時、手紙を出そうと思いましたが、きゅうに、紙に書くのがおしくなりました。
「人にやるもんに、紙はもったいない。あれに書こう」
だんなは、にわのカキの木のはっぱを二、三まいとると、それに手紙を書いて、つかいのものに、もたせました。
さて、それをもらったあいてのだんなも、手紙を出しただんなにまけず、けちんぼうです。
「ほほう。かきのはっぱの手紙とは、あいつもなかなかやるな。では」
こちらのだんなは、手紙をもってきた、つかいのものに言いました、
「すまないが、上着をぬいで、せなかを出しなさい」
言われた通りにすると、そのせなかへ、さらさらさらと、手紙のへんじを書きました。
しばらくたって、つかいのものが帰ってきますと、だんながききました。
「ごくろうだった。して、手紙のへんじはもらったかい?」
「はい、へんじは、ここにあります」
つかいのものがせなかを見せると、けちんぼうのだんなは、ざんねんそうに言いました。
「なんと、その手があったか。さっきのカキのはっぱは、おしいことをしたわい」
おしまい