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10月28日の小話
還暦の祝い
むかしむかし、ある村に、大そうな長者(ちょうじゃ→お金持ち →詳細)が住んでおりました。
りっぱな屋敷に住み、おおぜいの人をやとっていましたが、それはそれは欲ばりで意地が悪く、村人たちから嫌われておりました。
あるときのこと、長者が還暦(かんれき→六十才になること)を迎え、その祝いをすることになりました。
けれども、欲の皮の張った長者は、何とかして金がかからんようにと思うて、さっそく番頭(ばんとう→従業員のリーダー →詳細)に言いつけました。
「金がかからず、派手で、人のよろこぶ祝いを考えてくれ」
番頭は困ってしまいましたが、しばらく考えたあと、こういいました。
「それなら、こういうのはいかがでしょう。長者さまが首をおつりになるのです。人がさわぐので派手になりますし、村の者は大よろこび、その上、金もかかりませぬ」
「なるほど! その手があったか」
おしまい