
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 1月の日本民話 > おまけだけの買いもの
1月8日の日本民話
  
  
  
  おまけだけの買いもの
  千葉県の民話 → 千葉県情報
 むかしむかし、あるところに、ともてりこうな男の人がいました。
   なんでも売っている大きな店に行き、あちこちにならんでいる品物を手にとってはながめるのですが、買うようすがありません。
   それを見ていた店の主人が、がまんできずに言いました。
  「何か気に入ったものがありますか? たくさん買ってくれたら、うんとおまけしますよ」
  「それはありがたい。では、このわらぞうりを十足買ったら一足まけてくれるかね」
  「いいですとも。十足も買っていただけるのでしたら、一足ぐらいおまけしましょう」
  「うそじゃないな?」
  「もちろん。うそなんか言いません」
   男の人はわらぞうりを一足つかむと、今度はざるのおいてあるところへ行きました。
  「このざるを十個買ったら、一個まけてくれるかね」
  「はい。十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましょう」
   男の人はざるを一つつかむと、その中へわらぞうりを入れました。
   それから今度は、茶わんのならんでいるところへ行きました。
  「この茶わん十個買えば、一つまけてくれるかね」
  「ええ、十個も買ってくださるなら、一つはおまけしましよう」
   男の人は茶わんを一つ、ざるの中へ入れました。
   それからおわんにしゃもじと、何でも手あたりしだいに一つずつざるの中へ入れます。
   店の主人は、不思議に思ってたずねました。
  「どうして、一つずつ入れるのですか?」
  「なに、おまけのものから先に入れているのだ」
  「でも、今まで買ってもらったのはその十倍です。とても一人では持って帰れませんよ。なんでしたら、店の者に家までとどけさせましょうか?」
   すると、男の人は、
  「いや、そんな事をしてもらってはもうしわけない」
  と、言うなり、品物のいっぱいつまったざるをかついで店を出ました。
  「あの、もしもし、お客さん、まだお金をもらっていませんが」
   店の主人があわててよびとめると、男の人はすました顔で言いました。
  「今日は急ぐから、おまけしてもらったものだけもらうことにする。おまけのものばかりだから、金ははらわなくてもいいだろう」
  「へっ? それは、その・・・」
   店の主人が首をひねっている間に、男の人はどこかへ行ってしまいました。
おしまい