
  福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話 > しり鳴りしゃもじ
2月4日の日本民話
  
  
  
  しり鳴りしゃもじ
  岩手県の民話 → 岩手県情報
 むかしむかし、ある男がしゃもじのおかげで、お金持ちのおむこさんになった夢を見ました。
   次の朝、男が庭に出てみると、ツバキの木の下に、夢とそっくりなしゃもじが落ちているではありませんか。
   男はしゃもじをひろいあげると、自分のほっぺたをなでてみました。
   そのとたん、ほっぺたが
  ♪ウタピト、タピト
  ♪ウタピト、タピト
  と、鳴りだして、止まらなくなってしまいました。
  (こりゃ、こまったぞ)
   男はあわててほっぺたをおさえましたが、やっぱり、
  ♪ウタピト、タピト
  ♪ウタピト、タピト
   そこで思わず、しゃもじのうらでほっぺたをなでてみたら、ウタピトがピタリと止まりました。
  (なるほど、こりゃいいものをさずかったぞ。しゃもじのおもてでたたけば鳴り、うらでたたけば止まるんだな)
   男は喜んで、町に出かけました。
   すると向こうからお手伝いさんをお供につれた、お金持ちの娘さんがやってきました。
   とてもきれいな娘さんで、男はいつも、
  (この娘さんのおむこさんになれたら、どんなにいいだろう)
  と、思っていました。
   男は娘さんのそばを通る時、しゃもじのおもてで娘さんのおしりをなでました。
   そのとたん、娘さんのおしりが鳴りだしました。
  ♪ウタピト、タピト
  ♪ウタピト、タピト
   娘さんはビックリして、おしりをおさえましたが、
  ♪ウタピト、タピト
  ♪ウタピト、タピト
   道を歩いていた人たちも、あきれたように娘さんを見て言いました。
  「かわった音のおならをする娘さんだ」
  「それにしても、おならをしながら歩くなんて、若い娘がなんてはしたない」
   娘さんは、はずかしくてはずかしくて、なきそうになりながら家にもどっていきました。
   娘さんは自分の部屋へ飛込むと、頭からふとんをかぶってねてしまいました。
   それでも、音は止まりません。
  ♪ウタピト、タピト
  ♪ウタピト、タピト
   お金持ちはあわててお医者さんをよびましたが、お医者さんもどうしていいかわかりません。
   そこでしかたなく、家の前に立てふだを立てました。
  《娘の病気をなおしてくれた者は、この家のむこにする》
   それを見て、男はさっそくお金持ちの家にやってきました。
  「わたしが、娘さんの病気をなおしてあげましょう」
   男は家の者を娘さんの部屋から追い出して、しゃもじのうらで娘さんのおしりをなでました。
   そのとたん、音はピタリと止まりました。
  「なおった、なおったぞ!」
   お金持ちは、大喜びです。
   男は娘さんのおむこさんになって、一生しあわせにくらしたという事です。
おしまい