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 山びこになった男の子
 鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報
  むかしむかし、あるところに、男の子がいました。男の子はお父さんとお母さんの三人でくらしていましたが、お母さんが病気になって死んでしまったのです。
 そこでお父さんは男の子のために、新しいお母さんをもらうことにしたのです。
 ところが新しいお母さんはとてもいじわるで、男の子がにくらしくてたまりません。
 毎日毎日、出来もしないほどたくさんの仕事を言いつけては、男の子をこまらせていたのです。
 ある日、お母さんは、
 「山へ行って、つる草を取ってこい!」
 と、言いました。
 つる草というのは、ほかの木にまきつく草のことです。
 男の子は色々なつる草を取って、家に帰りました。
 ところが、お母さんは、
 「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
 と、言って、男の子を山へ追いかえしてしまいました。
 男の子は暗くなるまで山の中を歩きまわり、前よりもたくさんのつる草を持って帰りました。
 それでもお母さんは、
 「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
 と、言って、せっかく取ってきたつる草をみんなすててしまうのです。
 それからというもの、男の子は毎日毎日、朝早くから山へ行ってつる草を取りました。
 でも、どんなつる草を持って帰ってもお母さんは、
 「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
 と、言って、男の子を山へ追いかえします。
 (どうして? どうしてお母さんは、こんな仕事ばかり言いつけるの)
 悲しくなった男の子が山の中でないていると、まっ白な髪を長くたらしたおじいさんがやって来て、
 「どうした? なぜないているのかね?」
 と、たずねました。
 そこで男の子は、これまでの事をくわしく話しました。
 すると、おじいさんが言いました。
 「よし、よし、そんなお母さんのところへなんか、もう帰らなくてもいい。今日からお前を山の神さまにしてあげよう」
 と、言って、男の子を山びこにしてくれたのです。
 山びこになった男の子は、毎日、山の中を走りまわり、人の言葉をまねたり、イタズラをして遊ぶようになりました。
 山に向かって、
 「ヤッホー!」
 と、言ったら、
 「ヤッホー!」
 と、返事をする山びこです。
 山の道を歩いていて、突然バラバラと砂がふってきたりするのも、みんな山びこのしわざなのです。
 また、山で働く木こりが木を切っていると、ふいに後ろから、メシッ、メシッと、木の倒れる音もおこすのです。
 (なんだ、また山びこのイタズラだな)
 そこで、山びこになった男の子を知っている木こりが言いました。
 「山びこよ。イタズラをするのはおよし。せっかく山の神さまにしてもらったのに。また、あのおっかさんのところへ帰りたいか?」
 すると山びこはむかしのことを思い出して悲しくなり、すぐにイタズラをやめるのだという事です。
 おしまい    
 
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