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オニギリ地蔵
富山県の民話 → 富山県情報
むかしむかし、立山(たてやま→富山県の南東部)のふもとに、貧しいけれど仲の良い木こりの一家がありました。
ある時、可哀想な事に母親が三つになる男の子を残して、死んでしまったのです。
お葬式(おそうしき)の帰り道、男の子は村はずれに立っているお地蔵さんを見て言いました。
「あっ、お母ちゃんだ!」
男の子はお地蔵さんに抱きついて、離れようとはしません。
やがて父親は新しい母親をむかえましたが、男の子は新しい母親にはなつかず、いつもお地蔵さんのそばにいました。
新しい母親はそんな男の子がきらいで、男の子につらく当たるようになりました。
ある日の事、男の子がおねしょをすると、母親は怒って何も食べさせてくれませんでした。
ひもじくなった男の子が泣き出すと、
「地蔵さまがおにぎりを食べられたら、お前にも食べさせてやる」
と、男の子にオニギリを持たせました。
男の子はさっそく、お地蔵さんに頼みました。
「どうか、このオニギリを食べてください」
すると不思議な事に、石のお地蔵さんがオニギリをパクリと食べたではありませんか。
喜んだ男の子は新しい母親にこの事を話しましたが、母親は信じてくれません。
それどころか、
「お前が、食べたんだ!」
と、耳を強く引っ張ったため、男の子の耳は聞こえなくなってしまったのです。
それでも男の子は、お地蔵さんがおにぎりを食べたと言います。
そこで母親はまた男の子にオニギリを持たせると、そっと後をつけました。
そうとは知らない男の子は、お地蔵さんの口にオニギリを当て、
「もう一度、オニギリを食べてください」
と、お願いすると、お地蔵さんは涙をハラハラ流しながら、オニギリを食べ始めました。
母親は、これを見てビックリです。
母親はすぐに手を合わせて、お地蔵さんと男の子にあやまりました。
その後、聞こえなくなった男の子の耳は、母親が一生懸命にお地蔵さんにお願いしたので、やがて元通り聞こえるようになったという事です。
おしまい
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