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9月14日の日本民話
  
  
  
  カッパの証文
  福井県の民話 → 福井県情報
 むかしむかし、若狭(わかさ)に、ご先祖さまがカッパの証文(しょうもん)をもらったという家がありました。
   ある日の夕方、その家のおじいさんは、ウシに水あびをさせてやろうと海へつれていきました。
   ところが水あびが好きなはずのウシが、その日はどうしたわけか海に入ろうとしません。
   おじいさんが押しても引っぱっても、ウシは動こうとしないのです。
  「どうしたことなんだ?」
  と、いいながら、おじいさんは仕方なく波うちぎわでおけに水をくんで、ウシのからだをきれいに洗ってやりました。
   すると、ウシが突然、
  「モー、モー」
  と、泣きだし、何かをおいはらうように、うしろ足をけりはじめました。
   ウシのうしろ足をみると、五才ぐらいの子どもがウシのうしろ足をひっぱって、海につれていこうとする姿がみえました。
   おじいさんはビックリして、
  「何者だ!」
  と、いって、子どもをつかまえると、なわでぐるぐるまきにしてしまいました。
   子どもは、おじいさんのけんまくにおどろいて、
  「すみません。私はこの海に住むカッパです。京都の祇園祭(ぎおんまつり)には、人間や動物の尻の肉をおそなえしなくてはなりません。それでこのウシの尻の肉をちょうだいしようとしたのです」
  と、申し訳なさそうにいいました。
   おじいさんは、それを聞いてビックリ。
  「なんというやつだ!、わしのだいじなウシの尻を」
  と、いいながら、大きなげんこつをカッパに何発もくらわしました。
  「ごめん、ごめん。ごめんなさい! もうしません。たすけて!」
  と、カッパは悲鳴をあげました。
   それを聞いたおじいさんは、
  「本当か? 本当に、人間や動物に悪さしないか?」
  と、いうと、カッパはこっくりと頭を下げました。
  「よし、証拠(しょうこ)に証文(しょうもん)を書いてもらおうか」
  と、カッパにおじいさんはいいました。
  「はい、明日の朝までに書いて、おじいさんの家までおとどけします」
   カッパが約束すると、おじいさんはカッパのなわをといてやりました。
   次の日の朝、おじいさんは目がさめると、すぐに外へでてみました。
 戸口にはカッパの証文と、取れたて魚がたくさんおいてあったという事です。
おしまい