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9月30日の日本民話
  
  
  
  乙姫さまのくれたネコ
  京都府の民話 → 京都府情報
 むかしむかし、あるところに、花売りのおじいさんがいました。
   とても心のやさしいおじいさんで、花が売れのこると海辺に行き、
  「乙姫(おとひめ)さま、売れ残り物ですまんが、この花をもらってください」
  と、言っては、花を海に投げていました。
   するとある晩の事、かわいいネコをだいた女の人がやってきて、
  「わたしは乙姫さまの使いの者です。このネコは、おじいさんが花をくれたお礼です。このネコに毎日、お茶わん一ぱいのごはんをやってかわいがってください。そうすればきっと、ネコが小判をうみます」
  と、言いました。
   花売りのおじいさんはよろこんで、次の日から言われたとおり、ごはんを一ぱいだけ食べさせたら、ネコはチャリンチャリンと小判をうみました。
  (なんて、ありがたいネコだ)
   花売りのおじいさんは、ネコをいっしょうけんめいかわいがって、毎日お茶わん一ぱいのごはんを食べさせたので、たちまちお金持ちになりました。
    さて、その事を知った、となりのよくばりおじいさんは、
  「おい、わしにもそのネコをかしてくれ」
  と、言って、いやがるネコをむりやり自分の家につれていきました。
   それでも、やさしい花売りのおじいさんは、
  「いいか、ごはんは一日にお茶わん一ぱいだけ。それ以上食わせたらいかんぞ」
  と、教えてやりました。
   ところが、よくばりおじいさんは、
  (うまいこと言うて、わしのほうがお金持ちになるのが気に入らんのじゃろ。ごはんをたくさん食わせれば、それだけたくさんの小判をうむはず。わしはすぐに大金持ちじゃ)
  と、思い、どんどんごはんを食べさせました。
   するとネコは、小判を一まいもうまずに、おなかをこわして死んでしまいました。
  「なんじゃ、このネコは。ごはんばかり食いおって!」
   よくばりじいさんはすっかりはらを立てて、ネコを庭にすててしまいました。
  (なんて、なんてひどいことを・・・)
   花売りのおじいさんはネコをひろいあげると、自分の家の庭にうめて、その上に木を一本植えてやりました。
   すると不思議な事に、木はグングンとのびて、あっというまに金色の花をさかせたのです。
  (なんてきれいな花だ)
   花売りのおじいさんは、ネコのかわりにこの花をたいせつにしました。
   ある朝、花売りのおじいさんが目をさますと、庭の方からチャリンチャリンと、小判のふれ合うような音がします。
  (はて? なんの音やら?)
   花売りのおじいさんが庭へ出てみると、なんと大きな小判がえだいっぱいになっていて、チャリンチャリンと風にゆれているのです。
   花売りのおじいさんはもう大喜びで、その小判をかごいっぱいに取りました。
 この小判のおかげで、花売りのおじいさんは死ぬまでしあわせにくらしたという事です。
※ 福岡にも、同様の話しが伝わっています。「乙姫様のくれたネコ」
おしまい