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12月24日の日本民話
  
  
  
  生けどられたカミナリ
  三重県の民話 → 三重県情報
 むかしむかし、赤須賀(あかすが)という漁夫(ぎょふ)の町へ、大雨とともに赤い体の大きなカミナリが、ドスンと井戸の中へ落ちてきました。
   そこにいた村人がビックリして、何が落ちてきたんだろうと思い、井戸の中をのぞいてみてみるとカミナリが、
  「たすけてくれー」
  と、泣いているのでした。
  「たすけてくれだと、なにをいうか! 人の家をなんども焼いているくせに!」
  と、いって、村人は井戸にふたをしてとじこめてしまいました。
   さすがのカミナリも、これにはまいってしまい、大声を出して何度も頼みました。
  「おねがいだ。どうかふたをあけてくれ。おねがいだ」
  「よし、ふたをあけてやるから、そのかわりに何かいい物を残して行け」
   村人がいうと、カミナリは、
  「今は何一つ持っていないから、背中につけている太鼓(たいこ)を井戸に入れておく。それからこの井戸には、一年中水がきれないように、たくさんの水を入れておくから」
  と、いいました。
   そしてカミナリは、空へ飛んで行くときに、
  「ありがとうございました。これからはこの土地へは二度とカミナリを落としませんから、どうぞご安心のほどを」
  と、いって、かたく約束しました。
 それからはその井戸の水がきれたことがなく、また、年中太鼓の音が井戸の中からひびいて来るという事です。
おしまい