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        福娘童話集 > お薬童話 > 風邪(かぜ)の時に読む お薬童話 
         
        
       
ゆうれいをせおう娘 
スウェーデンの昔話 → スウェーデンの国情報 
      
       むかしむかし、ある村はずれに古い教会がありました。 
 この教会には、いつからか、夜になるとゆうれいがあらわれるようになったのです。 
 そのゆうれいは、カラカラにひからびたミイラで、いつもお堂にすわっていました。 
「きっと、わけがあるにちがいない」 
 村人たちはそう思いましたが、こわいので、夜は教会に近づきませんでした。 
 ある晩、村の農家に若者たちが集まって、ワイワイさわいでいるうちに、 
「どうだい、あの教会のゆうれいを、ここにつれてくるものはいないか? もしつれてきたら、一番よい服をつくってやるぞ」 
と、仕立て屋がいいました。 
 でもゆうれいと聞いて、若者たちはだまってしまいました。 
 その時、部屋のすみから、 
「わたしがいくわ!」 
と、いう声がしました。 
 それは、この家のお手つだいの娘でした。 
 この娘は、村でも評判(ひょうばん)の、元気で勇気がある娘です。 
「ああ、いいだろう。できるものなら、やってみな」 
 仕立て屋は、いくら娘に勇気があっても、教会までいったらきっと、こわくてないて帰ってくるにちがいないと思っていました。 
 ところがどうでしょう。 
 娘は本当に、一人で教会にいって、ゆうれいをおぶって帰ってきたではありませんか。 
「ひええっ!」 
 若者たちは、青くなりました。 
 イスにすわらされたゆうれいは、暗い大きな目で、ジッと若者たちを見つめるのです。 
「は、はやく、はやくつれていってくれ! 服をもう一着つくってあげるから!」 
 仕立て屋は、かすれた声でいいました。 
 娘はしかたなしに、またゆうれいをおぶって教会にもどりました。 
 ところがこまったことに、教会についてもゆうれいは、娘の背中からおりようとしないのです。 
「さあ、おりてちょうだい」 
と、いっても、首にしがみついたまま、はなれようとしないのです。 
「おねがい、ねえ、おりてよ」 
 娘が何度もいうと、ゆうれいは、やっと口をひらきました。 
「それなら、いうことをきいてくれるかい?」 
「ええ、きっと」 
「じゃあ、いますぐ川に行って『ペールの娘、アンナさん。トーレ・イエッテをゆるすかい?』と、大声で三回いっておくれ。その川には、わしが生きているときに殺した、かわいそうな娘がしずんでいるんだ」 
「わかったわ、そういえばいいのね」 
 娘が返事をすると、ゆうれいは娘の肩から手をはなしました。 
 娘はすぐに、暗い道を歩いて川にいき、大声でいいました。 
「ぺールの娘、アンナさん。トーレ・イエッテをゆるすかい?」 
 ゆうれいにいわれたとおり三回いうと、川から女の人の声がしました。 
「神さまが、おゆるしになるのなら、わたしもゆるします」 
 娘はこのことばを聞くと、急いで教会にもどりました。 
「何かいってたかい?」 
 ゆうれいは、まちかねたように聞きました。 
「ええ。『神さまがおゆるしになるのなら、わたしもゆるします』って」 
「本当に、そういったんだね。わしはもう、神さまのそばで十分につみのつぐないをした。これであの世にいけるぞ」 
 ゆうれいは、ホッとしたようにいいました。 
「ありがとう。では今夜はもうお帰り。そして朝がくるまえに、もう一度ここにきておくれ」 
 朝日がのぼるまえに、娘が教会にいくと、ゆうれいはもういませんでした。 
 そのかわり、山のような銀貨がそこにおいてありました。 
 娘はその銀貨を手にして、大喜びです。 
 そしてそれっきり、ゆうれいはあらわれなくなったということです。 
      おしまい 
          
         
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