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1月19日の世界の昔話

ウシ飼いと裁判官

ウシ飼いと裁判官
ボスニアの昔話 → ボスニアの国情報

 むかしむかし、あるびんぼうな男がお金持の裁判官に、ウシ飼(か)いとしてやとわれました。
 ウシ飼いは、やせほそったウシを一頭もっていました。
 そのウシを、いつも主人のウシといっしょに、牧場につれていきました。
 ある日のこと、どうしたことか、主人のウシとウシ飼いのウシが、けんかをはじめました。
 そして、やせっぽちでよわいはずのウシ飼いのウシが、主人のウシをツノでつきころしてしまいました。
 ウシ飼いは、主人の裁判官のところへかけつけました。
「ああ、おなさけ深いだんなさま。たいヘんなことがおこりました。どうか公平(こうへい)に、おさばきくださいませ」
「よろしい。はなしてみなさい」
「じつは、きょう、牧場でだんなさまのウシが、わたくしめのウシとけんかをしまして、わたくしめのウシをつきころしてしまいました。神さまは罪をおかしたウシに、どんな罰をおくだしになるのでしょうか」
「まて、まて。はじめから、くわしくしらべよう。わしのウシは、おまえのウシをにらんだかね」
「いいえ、だんなさま」
「わしのウシがとびかかったとき、おまえのウシは、モーと、ないたかね」
「はい、だんなさま」
「では神にちかって、正直にいうのだぞ。おまえのウシが、わしのウシをおこらせたのだろう」
「そんなことはわかりません。だんなさま。モーといったのが、どんなわけかなんて、しらべられませんよ」
「それでは、どっちがわるかったのか、おまえにはわからないのだな」
「はい、だんなさま」
「どちらがわるかったのか、わからないとすれば、罰(ばつ)することもできない。けものをさばくことなど、できると思うか?」
「そのとおりでございます。だんなさま。まったく、公平におさばきくださいました。ただ、あの・・・」
「なんだ。まだ用があるのか?」
「あの、いま思いだしたのでございます。わたくしが、考えちがいをしておりました。わたくしめのウシが、だんなさまのウシを、ころしてしまったのでございます」
「なんだと。そうか。では、神がおまえのウシに、どんな罰をおくだしになるか、本でしらべよう」
「おや? だんなさま。あなたさまのウシが罰をうけなくてよいのなら、わたくしのウシもうけなくてよろしいでしょう。けものをさばくことなど、できるとお思いですか?」
「そっ、それは・・・。そのとおりだ」

おしまい

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