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福娘童話集 > お薬童話 > アレルギーをやわらげる おくすり童話
ヒヨコ星
タイの昔話 → タイの国情報
むかしむかし、ある町はずれの畑の中に、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
二人の家は小さくて、持ち物は一羽のメンドリだけでした。
しばらくして、メンドリは六つのタマゴを生みました。
六つのタマゴは、六羽のかわいいヒヨコになりました。
「さあ、お母さんのあとについておいで」
メンドリは大よろこびで、ヒヨコたちの世話をしました。
タカやトビなど、こわい鳥たちにさらわれないように気をつけて、だいじにだいじに育てました。
ところが、ある晩のことです。
メンドリがヒヨコたちをねかしつけていますと、こんな話し声が聞こえてきました。
「ばあさんや、明日から村でおまつりがあるそうじゃ。わしらもおまつりにいきたいが、神さまヘのおそなえ物をどうしよう?」
「本当にどうしましょう? わたしらは貧乏で、ものを買うお金もありません。でも、おまつりに何も神さまにおそなえしなかったら、ほかの人たちに、けちんぼうと思われるでしょうね」
おじいさんとおばあさんは、おまつりのおそなえ物の相談をしていたのです。
そしてとうとう、おじいさんがいいました。
「どうだろう。一羽しかいないが、あのメンドリをおそなえしたら」
おばあさんは、悲しそうにうなずきました。
「そうですね。ヒヨコたちがかわいそうですけど、それしかないですね」
二人の話を、メンドリはみんな聞いていました。
あしたは、小さな子どもたちをのこして、死ななければなりません。
メンドリは、ヒヨコたちにいいました。
「かわいい子どもたち、あした、お母さんは死ななければならないの。おねがいよ、お母さんがいなくなっても、おまえたちはけんかせずに、なかよくくらしなさいね。食べものを見つけたら、いつでもいっしょに食べてね。けっして、はなればなれにならないでね。それから、家の外に出たりしちゃだめよ。こわいイヌがいるからね」
「いやだよ! お母さん。どうして死ななくちゃならないの?」
ヒヨコたちが、なき出しました。
お母さんも、なき出したいのをがまんして、
「おじいさんとおばあさんが、わたしの肉を神さまにおそなえするとはなしていたの。死ぬことはこわくないけれど、小さなおまえたちをのこしていくのが心配で。それからそうだわ、どんなに遊びたくなっても、あき地へは出ていかないと約束して。タカやトビにねらわれるからね。それから・・・」
と、ひと晩じゅう、ヒヨコたちにいろいろなことをいいきかせました。
つぎの日、おじいさんは朝はやくおきると、すぐにメンドリを殺しました。
それから羽をむしるために、グラグラにえたお湯の中に、メンドリをなげこみました。
それを見ていたヒヨコたちは、もう、ジッとがまんしていることができません。
「お母さん、今すぐ、ぼくたちもいくからね!」
「天国に行っても、いっしょにいようね!」
ヒヨコたちは小さな羽をはばたかせると、つぎつぎと、お湯の中へとびこんでいきました。
このかわいそうな鳥たちのようすを、天の神さまが見ていました。
「なんという、美しい母と子の心だろう。おまえたちがいつまでもいっしょにいられるよう、星に生まれかわらせてやろう」
こうして、お母さんと六羽のヒヨコたちは、夜空にきらめく七つの星になりました。
おしまい
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