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7月2日の世界の昔話
メンドリ小麦粒
イギリスの昔話 → イギリスの国情報
むかしむかし、あるところに、一羽のメンドリがいました。
「ごちそうだよ。みんなおいで」
メンドリはいつも庭をつっついて、エサをみつけてはヒヨコたちに食べさせていました。
ある日メンドリは、小麦粒が落ちているのをみつけました。
「これをまくと、たくさん小麦ができるのよ。ふやしてから食べましょう」
メンドリは、大きな声でいいました。
「小麦のタネをまくの。だれか手伝ってちょうだい」
でも、池で遊んでいたアヒルは、
「ごめんよ、わたしはいそがしいんだから」
と、ことわりました。
ブタは眠そうに目を開けましたが、
「あー、あー、あー」
あくびをしただけで、知らぬ顔です。
ひなたぼっこのネコも首をふって。
「いま、用があるのよ」
だれも手伝ってくれないので、メンドリは一人で小麦のタネをまきました。
やがて、小麦がたくさんみのりました。
そこで、メンドリはみんなをよびました。
「小麦をかり取るの。だれか手伝ってちょうだい」
するとアヒルは、
「いま、泳ぎをならっているところ」
と、いいました。
ブタは、
「ぼく、今はごちそうを食べているのでいけないの」
ネコは、
「わたし、毛皮をみがいているの。だめよ」
しかたなくメンドリは、1人でせっせと小麦をかり取り、粉屋さんに持って行きました。
まもなく、メンドリはまっ白になった粉の袋をかついで帰ってきました。
そして、大声で言いました。
「おいしいパンを焼くのよ。だれか手伝ってちょうだい」
するとアヒルは、
「そんなめんどうな事は大きらい」
ブタは、
「そんなしんどい事は大きらい」
ネコは、
「そんなじゃまくさい事は大きらい」
だれも手伝ってくれません。
しかたなくメンドリは、1人でパンを焼きました。
とっても、いい香りのパンが焼き上がりました。
「さあ、子どもたち。パンをたべましょう」
メンドリとヒヨコたちがパンを食べ始めますと、みんなが集まってきました。
アヒルが、
「おいしそうね。そのパンを、わたしにもくださいな」
ブタが、
「うまそうだな。そのパンを、ぼくにもくださいな」
ネコが、
「いい香りね。そのパンを、わたしにもくださいな」
すると、メンドリがいいました。
「いいですよ。このパンを作るのを手伝ってくれた人から、順番にあげます。さあ、だれが最初にてつだってくれましたか?」
それを聞いて、アヒルもブタもネコも、恥ずかしそうに帰って行きました。
おしまい