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レモンのごほうび
インドの昔話 → インドの国情報
むかしむかし、インドのあるお城に、ラブダ・ダッタという、しょうじきな門番がすんでいました。
門番はびんぼうで着るものがないので、毛皮を腰にまいたきりで、雨がふろうが日がてりつけようが、門に立っていました。
「なんとまじめな門番だろう」
王さまは、その門番が気に入り、ある日、狩りにでかけるとき、その門番をおともにつれていきました。
象にのった王さまの前に立った門番は、あいかわらずはだしで腰に毛皮をまいたかっこうで、
「やあ! やあ! たあっ!」
と、棒をふりまわして、イノシシやシカをやっつけてしまうのです。
「おかげで、えものがふえたぞ」
王さまは、大よろこびでした。
あるとき王さまは、となりの国と戦争をはじめました。
「王さま、わたくしもおともさせてください」
門番は、王さまにお願いしましたが、
「だめだ。おまえは弓がつかえないだろう」
「はい。でも、弓はつかえなくてもだいじょうぶです」
門番はふとい腕をだして、王さまに見せました。
「これさえあれば、てきをやっつけてごらんにいれます」
そして戦争にいくと、門番は棒だけでゆうかんにたたかい、だれよりもたくさんのてきをやっつけたではありませんか。
「なんと、いさましい男だろう」
王さまは、また、かんしんしてしまいました。
それから、何年もたちました。
門番はあいかわらず、お城の門に立っていました。
そんな門番を見て、王さまは、
「あの門番はまじめだし、いさましい男だ。それなのに、よほど運がわるいとみえて、いつもびんぼうしている。なにかほうびをやりたいものじゃ」
と、かんがえました。
そして、けらいたちを大ぜいあつめました。
門番も、やってきました。
「ラブダ・ダッタよ。ここへきて、なにか歌をうたっておくれ」
王さまがいうと、門番は大きな口をあけて、こんな歌をうたいました。
♪運の神さま えこひいき。
♪お金持ちには しんせつで、
♪びんぼう人には しらんかお。
♪運の神さま えこひいき。
王さまはおもしろそうにわらって、門番にレモンを一つあげました。
「ごほうびはレモン一つだった。やっぱりわたしは、運がわるいんだなあ」
門番がしょんぼりと門に立っていると、坊さんが声をかけました。
「おお、みごとなレモンだ。どうです。この着物と、とりかえてくれませんか?」
「いいですとも」
門番はよろこんで、着物をもらいました
坊さんは王さまのところへいって、レモンをさしだしました。
「王さま。りっぱなレモンを手に入れました。めしあがってください」
王さまは、レモンを見てビックリ。
「ああ、あの男は、まだ運がむいていないなあ」
じつはレモンの中には、たくさんの宝石がつめてあったのです。
つぎの日、また王さまはみんなをあつめて、また門番に歌をうたわせました。
♪運の神さま、えこひいき。
と、門番がうたうと、王さまはうれしそうにわらいました。
そしてごほうびに、またレモンを一つ、門番にあげました。
「ああ、きょうもレモンだった」
門番はガッカリして、レモンをもったまま門に立っていました。
そこに、役人がやってきました。
「なんときれいなレモンだろう。王さまにさしあげよう。どうだ、着物二枚ととりかえてくれないか?」
門番はレモンをあげて、着物二枚をうけとると、それをうって食べ物をかいました。
役人がもってきたレモンを見て、王さまはかなしくなりました。
「どこまで運のわるい男だろう。着物二枚ととりかえたなんて」
またつぎの日、王さまはみんなをあつめて、門番に歌をうたわせました。
そしてまた、ごほうびにレモンをあげました。
「王さまは、めぐみぶかいかたなのに、へんだなあ? どうしていつも、レモンしかあげないのだろう」
けらいたちは、ふしぎに思いました。
門番は、こんどはレモンを王さまのおきさきにあげました。
「おいしそうなレモンだこと。王さまが、およろこびになるわ」
おきさきはそういって、門番に金のかたまりをくれました。
門番は金のかたまりをうって、ごちそうをおなかいっぱいたべました。
「わたしは、いつもレモンしかもらえないけど、きょうみたいなこともあるんだから、がまんしよう」
門番はそういって、またいつものように門に立ちました。
「何回やっても、宝石をつめたレモンがかえってくるなあ」
おきさきからレモンをうけとった王さまは、それでもまだあきらめません。
そして、つぎの日もまた、みんなをあつめました。
大臣も町の人びとも、あつまってきました。
門番も、あとからやってきました。
王さまはいつものように、門番に歌をうたわせました。
♪うんの神さま えこひいき。
♪いつまでたっても
♪お金持ちには しつせつで、
♪びんぼう人には しらんかお。
「うまいうまい。それでは、ほうびをあげよう」
王さまはいつもより、もっとたのしそうにいいました。
「こんどこそ、お金をどっさりあげるにちがいない」
みんなは、ジッと王さまの顔をみつめました。
ところが王さまがくれたのは、やっぱりレモン一つきりです。
門番がうけとろうとすると、王さまはわざと、そのレモンを床に落としました。
すると床に落ちたレモンはまっぷたつにわれ、中からひかりかがやく物がこぼれ出ました。
「あっ、宝石だ!」
「いっぱいつまっているぞ。これはすごい!」
「お金より、ずっといいじゃないか!」
みんなは、ビックリしていいました。
門番はあっけにとられて、口もきけません。
「そうだったのか。やっぱり王さまは、めぐみぶかいかただったんだよ」
けらいたちは、口々に王さまをほめました。
王さまは門番に宝石のつまったレモン一個のほかに、村を一つと、金貨もたくさんあげたということです。
おしまい
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