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11月1日の世界の昔話

岩山の大将

岩山の大将
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 むかしむかし、山ヒツジの家が、高い山の岩のかげにありました。
 山ヒツジは、山に住んでいるヒツジです。
 けわしい岩の上をとんでいく、とっても元気のいい動物です。
 山ヒツジの家には、三匹の子ヒツジがいました。
 ある日のことです。
 こわいオオカミにおそわれて、子ヒツジの一匹が食い殺されてしまいました。
「まあ、かわいそうに」
 お母さんヒツジは、たいそう悲しみました。
 けれども、死んだものを生きかえらせることはできません。
「こんなオオカミの出るようなところは、あぶなくてしようがない。もっと安全な土地へひっこしましょう」
と、お母さんヒツジはいいました。
 お父さんヒツジは、『岩山の大将(たいしょう)』といわれる、とても強い山ヒツジです。
 長くて、するどいツノを持っていました。
 けれども、みんなの安全のために、お父さんヒツジはひっこしをすることにしました。
 お母さんヒツジと、生きのこった子ヒツジと、仲間の山ヒツジたちは、みんなで十二匹います。
 岩山の大将をせんとうに、みんなはそのあとに続きました。
 山をくだり、谷を渡り、どこまでもかけていきました。
「ウォーッ!」
 ふいに、オオカミのうなり声がしました。
 毛むくじゃらな、気のあらいオオカミたちが、山ヒツジたちを見つけたのです。
「ウーッ、ウオーン!」
 うなりながら、オオカミが八匹も追いかけてきました。
「たいへんだ、いそげ!」
「あーん、こわいよう」
 子ヒツジや力の弱いヒツジは、もう泣き声です。
「力のかぎり、かけろ!」
 岩山の大将はさけびました。
 十二匹の山ヒツジの仲間は、一列になって大将のあとからかけていきます。
 だけど、オオカミとの間は、グングンとちぢまっていきます。
「メ、メーッ」
 足の弱った一匹の年寄りヒツジが、木の根につまずいてころびました。
「あぶない!」
 岩山の大将は、クルリと向きをかえました。
 そこは、せまいがけ道です。
 一匹ずつしか通れません。
 大将は仲間のヒツジたちをかけぬけさせ、じぶんだけがのこりました。
「ウォーッ!」
 追いついたオオカミが、キバをむいて飛びかかりました。
「なにくそっ!」
 岩山の大将は頭をさげ、大きなツノでオオカミを突きとばしました。
 その勢いに、オオカミはがけ下へころがっていきます。
 つぎつぎとかかってくるオオカミを、大将はかたっぱしから投げとばしました。
 かしこい大将は、一匹ずつしかかかってこれない場所でたたかったのです。
 そうして、オオカミをみんなやっつけてしまったのでした。
「メェーー!」
 ひと声高く、かちどきをあげると、岩山の大将は足どりも軽く、仲間のあとを追っていきました。

おしまい

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