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2008年 5月22日の新作昔話
知恵のある娘
グリム童話 → グリム童話の詳細
むかしむかし、あるところに、貧しいけれど正直者のお百姓さんがいました。
ある日、畑をたがやしていると、土の中から金のうすが出てきました。
「おおっ、なんと素晴らしいうすだ。よし、これは王さまにさしあげよう」
お百姓がさっそく、その金のうすを持ってお城へいくと、王さまは一目見ていいました。
「なるほど、素晴らしいうすだな。ほめてつかわそう」
「ははっ、ありがとうございます」
頭を下げるお百姓に、王さまは少し首をかしげて言いました。
「しかし、うすだけとは妙だな。うすだけあっても、きねがなくては役には立たん。土の中にうすがあったのなら、きねもあったであろう。百姓よ。どうして、きねを持ってこないのだ?」
それを聞いたお百姓さんは、あわてて言いました。
「いいえ、きねはありません。土の中から出てきたのは、うすだけです」
ところが王さまは、聞き入れてくれません。
「いいや、お前はきねまでわたしにくれるのが、おしいのであろう。それでそんなうそを、言っているのだろう」
「いいえ、本当に、うすしかなかったのです」
「うそを申すな! このうそつき百姓め! 本当の事を言うまでは、お前を帰さないぞ!」
こうして王さまは、お百姓さんを牢屋に入れてしまったのです。
そのことを聞いて、お百姓さんの娘はびっくりしました。
そしてさっそく城へかけつけると、涙を流して王さまに言いました。
「王さま。本当に、きねはなかったのです。うそを言っているのではありません。どうか、父をお許しください」
「うむ・・・」
王さまは娘の涙を見て、お百姓の言っていた事がうそではないとわかりました。
でも、一度牢屋に入れた者を簡単に許してしまうと、王さまとして、これからあまりいばれなくなってしまうと思いました。
そこで、王さまは言いました。
「よろしい、許してやろう。ただし、わたしの出す問題がとけたらだ。いいか、よく聞けよ。お前はいったん家に帰り、着物を着ないで、はだかでもなく、馬にも車にも乗らず、道を歩かず道を通って、この城まで来てみなさい。それができたら、お前の父親を許してやろう」
さあ、大変な事になりました。
大変むずかしい問題です。
でも、しばらく考えていた娘は、
「そうだわ」
と、すぐにっこりして、王さまの前からひきさがりました。
やがて家へ帰った娘は、着物をぬいではだかになり、大きなさかな取りのアミで、からだをすっぽり包みました。
次にアミのはしをロバのしっぽに結びつけると、ロバに自分のからだを引きずらせながら、お城へとやって来たのです。
これで、着物を着ないで、はだかでもなく、馬にも車にも乗らず、道を歩かないで、城へ来たことになるのです。
王さまは娘の知恵に、すっかり感心して言いました。
「なかなか利口な娘だ。よろしい、約束通り父親を許してやろう」
お父さんは、すぐ牢屋から出されました。
そのうえに娘はたくさんのごほうびまでもらって、お父さんと一緒に家へ帰りました。
おしまい
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