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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 > お坊さんにだまされたキツネ 
      2008年 12月7日の新作昔話 
        
           
  お坊さんにだまされたキツネ 
  山梨県の民話 → 山梨県情報 
       むかしむかし、ある村はずれに、一匹のキツネがすんでいました。 
         とてもずるがしこいキツネで、村の人たちをだましては、魚やあぶらあげをとっていました。 
         中でも一番よくとられるのは、お坊さんでした。 
         村の家へお経をあげに行くたびに、もらってくるごちそうをキツネにだましとられていました。 
         このキツネはまるで人間そっくりに化けるので、ついだまされてしまうのです。 
         ある日の事、お坊さんは道ばたで、昼寝をしているキツネを見つけました。 
        (よし、今日は、こっちがキツネをだましてやろう) 
         お坊さんは、寝ているキツネの肩をたたいて言いました。 
        「だんなさん、だんなさん」 
         キツネはびっくりして飛び起きると、あわてて金持ちのだんなに化けました。 
        「だんなさん。こんなところで寝ていると、キツネにだまされますよ。どうです? 二人で料理屋へごちそうを食べに行きませんか?」 
        「ごちそう? そいつはいいですね」 
         キツネは大喜びで、お坊さんと一緒に町の大きな料理屋へ行きました。 
        「さあ、どんどん食べて、じゃんじゃん飲んでくださいよ。いつもお世話になっているお礼に、今日はわたしがごちそうをしますから」 
         お坊さんは、おいしい料理やお酒をどんどん運ばせて、自分もせっせと食べたり飲んだりしました。 
        「いやあ、すまんのう」 
         だんなに化けたキツネも、お坊さんに負けずと料理を食べてお酒を飲みました。 
         やがて、すっかりお腹が一杯になったお坊さんは、 
        「ちょっと失礼して、小便に行ってきます」 
        と、言って、部屋を出ました。 
         それから、女中さんを呼んで言いました。 
        「わしは、まだこれから行くところがあるので、すまんが大急ぎで、おみやげを作っておくれ」 
        「はい」 
         女中さんが、おみやげの料理を持ってくると、 
        「そうそう、代金は食べた分と一緒に、だんなさんからもらっておくれ」 
        と、言って、さっさと帰っていきました。 
         さて、部屋に残されたキツネは、 
        (ずいぶんと、長いおしっこだなあ) 
        と、思いながらも、一人でお酒を飲んでいました。 
         しかしお坊さんは、いつまでたってももどってきません。 
        (おかしいな。何をしているのかな?) 
         キツネはだんだん、心配になってきました。 
         そのうちにほかのお客さんはみんな帰ってしまい、残っているのはキツネだけになりました。 
         そこへ女中さんがきて、言いました。 
        「だんなさん、申し訳ありませんが、そろそろお店も終わりますので」 
        「そうか。ところでわしのつれのお坊さんはどうした?」 
        「はい。もう、とっくにお帰りになりました」 
        「なんだと! 帰っただって!」 
        「そうですよ。料理とおみやげのお金は、だんなさんからいただくように言われました」 
        (しっ、しまった。坊さんにだまされた!) 
         キツネは、あわてました。 
         はやく逃げ出したいのですが、お金をはらわないと料理屋を出ることができません。 
         でもキツネは、一文無しです。 
        (どうしよう、どうしよう。困ったぞ) 
         おろおろしているうちに、うっかり変身がとけてしまい、キツネの姿にもどってしまいました。 
        「あっ、キ、キツネ!」 
         女中さんが大声で叫ぶと、その声を聞いて、お店の人たちがかけつけてきました。 
        「人間に化けてただ食いするなんて、とんでもないキツネだ!」 
        「さあ、逃がすもんか!」 
         お店の人たちは、棒やほうきでキツネをなぐりつけました。 
        「た、助けてくれえー」 
         キツネは店の中をぐるぐると逃げまわり、やっとのことで天井裏から外に飛び出しました。 
        「それにしても、ひどいお坊さんだ。キツネを連れてくるなんて」 
         次の日、料理屋の主人はお坊さんのところへお金をとりに行きました。 
         ところがお坊さんは、すました顔で言いました。 
        「そいつはお気の毒な。でもわしは、お前さんの店なんかに行ったことがないよ。きっとそのお坊さんも、キツネが化けていたんだろうよ」 
         それを聞いた料理屋の主人は、 
        「あのキツネめ。今度見つけたら、ただではおかないぞ!」 
      と、言って、くやしがりました。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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