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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > ヤモリと釘 
      2009年 9月4日の新作昔話 
          
          
         
ヤモリと釘 
東京都の民話 → 東京都情報 
      
       むかしむかし、ある春の日の事、江戸のある家で雨よけの板が腐ったので、板を取り替える事にしました。 
 さっそく大工が腐った板をはぎとって見ると、なんとその下に、体を釘に打たれたヤモリがいて、くるくるくるくると、まわっていたのです。 
「やれやれ。背中から腹まで、釘を打たれておるわい」 
「これでは、まわるばかりで逃げられん」 
 大工たちが騒いでいるところへ、家の主人も出てきて、 
「ははあ。これはきっと五年前、この家をなおしたとき、釘を打たれたものにちがいない」 
と、言いました。 
 すると大工たちは、 
「へーえ、それにしても、五年もの長い間、どうして生きておったものかのう」 
と、不思議がりました。 
 そこで大工が調べてみると、近くの壁にヤモリが行き来した道らしい、一すじのあとがついていたのです。 
「そうか。この道を通って、五年もの間、仲間が食べ物を運んでいたというわけか」 
「なるほど」 
「こんなヤモリでも、情というものはあるんじゃな」 
「ヤモリよ、お前もよい仲間を持ったものだ」 
 みんなは仲間を助けたヤモリたちに感心し、釘に打たれたヤモリを助けてやったという事です。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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