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2月19日の世界の昔話

月の夜の訪問者

月の夜の訪問者
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おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
指輪@の折り紙ゆびわ@    ゆびわAの折り紙ゆびわA

 むかしむかし、将来結婚する事を誓い合った若者と娘がいました。
 ある日、若者が仕事で旅に出る事になったので、娘にしばらくの別れを告げて、自分の金の指輪(ゆびわ)を娘の薬指にはめてあげました。
「帰るまで、これはきみが持っていてくれないか」
「うん。じゃあ、あなたにはこれを」
 娘も自分の指から銅の指輪を抜き取ると、若者の小指にはめました。
「それじゃあ、秋の収穫(しゅうかく)の頃には帰って来るからね」
 若者は、そう約束をしたのですが、若者は秋になっても村に帰って来ませんでした。
 村に初雪が降るようになっても、若者からは何のたよりもありませんでした。

 ある日、娘は友だちに誘われて、ひと晩泊まりに行きました。
 そこにはほかに友だちも二人来ていて、四人は一緒に糸をつむいだり、話をしたりして、とても賑やかに夜を過ごしました。
 そのうちに話がはずんで、自分たちの恋人の話になりました。
 そして、旅に出た若者を待っている娘の番になりました。
「ねえ、これを見て。この金の指輪は、あの人が別れる時にわたしの指にはめてくれたのよ。これをはずせる人なんて、この世にたった一人だけ、あの人しかいないのよ」
「でも、そんなにあなたを想っているのなら、そろそろ帰って来ても良い頃なのにね」
「それは、・・・・・・」
 外は朝からの雪が降り積もっていて、あたりはまっ白です。
 ソリのスズの音が遠くから近づいて来ては、また遠ざかって行きました。
「ねえ、あのソリは、何だろうね?」
「本当ね。来たかと思うと、また行ってしまうし。まるで誰かを探しているみたい」
 そう言っていると、スズの音が家のそばまで来てピタリと止まりました。
「ねえ。さっきのソリが来たよ」
 一人の娘がそう言った時、
 コンコン、コンコン
と、扉を叩く音がしました。
 こんな夜ふけに誰だろうと、みんなで恐る恐る窓の外をのぞいてみました。
「ねえ、誰かが黒い外とうを着ているわ」
「若い男の人よ」
「どれ、わたしにも見せて」
 そして娘が見てみると、それは何と、旅に出た自分の恋人だったのです。
「ごらんなさい! 帰って来たわ。わたしのいい人が!」
 娘は喜んで扉を開けると、若者に飛びつきました。
「お帰りなさい! ・・・まあ! すっかり冷えてるじゃないの。手も顔もこんなに冷たくなって。さあ、暖炉(だんろ)にあたって」
 娘が手を取って中に入れようとしましたが、若者は火のそばには行きませんでした。
「それじゃあ、わたしと一緒に家に帰ろう」
 すると娘の友だちは、
「こんな夜ふけだから、明日にしたら」
と、言って引き留めましたが、でも娘は、
「うん。でも、二人で家に帰るわ。糸つむぎの続きは、また明日にしましょう」
と、若者のソリに乗りました。
 娘が若者に肩を寄せた時、若者の体が氷の様に冷たいのでビックリしましたが、若者の小指に銅の指輪をはめているのでニッコリと微笑みました。
「さあ、あなたの家に連れて行って」
 二人を乗せたソリは、月の夜道を走っていきました。
 でもそれっきり、二人の姿を見た人は誰もいませんでした。

おしまい

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