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第15話

魔法のビール

魔法のビール
デンマークの昔話 → デンマークの国情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「Dr シロネコ

 むかしむかし、ロースキルデというところに、お金持のお百姓(ひゃくしょう)が広い土地をもっていました。
 その土地の中の丘のひとつに、小人たちが住んでいました。
 ある日のこと、小人たちは結婚式のお祝いで大さわぎをしていました。
 ところが夜おそくなってから、あいにくビールがなくなってしまいました。
 そこで一人の小人が、お百姓のところへいって、トントンと戸をたたきました。
「こんばんは。ビールを一タル貸してくれませんか。あなたはこのあいだビールをつくったばかりだから、たくさんおもちでしょう。こんどわたしたちがつくったときにかならずおかえししますから」
と、小人はいいました。
「おまえさんはだれだね? どこに住んでいるんだね?」
と、お百姓はたずねました。
「わたしはあそこの丘に住んでいるものです」
と、小人はこたえました。
「よろしい。地下室へいって、一タル持っていきなさい」
と、お百姓はいいました。
 小人はビールを持って帰っていきました。
 それから三日目の夜、また小人がやってきて、トントンと戸をたたきました。
 お百姓は、おきあがって、
「だれだね、戸をたたくのは?」
と、たずねました。
「わたしですよ」
と、小人はこたえました。
「ビールをおかえししにきたんです。地下室へおいておきますよ。それからお礼に、うまい魔法をかけておきますからね。あなたがもしタルの中をのぞきこみさえしなければ、タルからは、いつでもあなたのほしいだけビールがでてきます。いつまでたってもからっぽになりませんよ」
 それは、ほんとうでした。
 タルからは、いくらついでもビールがでてくるのです。
 そのかわり、もちろんだれ一人、タルの中をのぞいて見るものはありませんでした。
 ところがあるとき、この家に新しい女中(じょちゅう)がきました。
(あのタルからは、どうしていくらでもビールがでてくるのかしら?)
と、女中はふしぎに思いました。
 女中はタルの中に、あとどのくらいあるかのぞいてやろうと思いました。
 ところがタルの中をのぞいたとたん、女中はビックリして思わず、
「キャアーッ!」
と、さけびました。
 なんとタルの中は、カエルでいっぱいだったのです。
 このときからというもの、タルの中のビールはなくなってしまいました。

おしまい

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