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百物語 第228話

もどり五斉

もどり五斉
三重県の民話三重県情報

 むかしから旧の六月二十五日、二十六日は五斎(ごさい)の日といって、海女(あま)たちが海へもぐらない日といわれています。
 それはサメが沖にいて、海女たちを飲み込んでしまうからだとか、また城ヶ島(じょうがしま)に住んでいる大蛇(だいじゃ)がのっそりと沖へ出て来て、海女を飲み込んでしまう日だともいわれているからです。
 そのため村の人々は、あの島は蛇ヶ島(へびがしま)だとおそれて、この付近に行こうとする海女は一人もいませんでした。
 大蛇は島と大陸との間の深いふちにしずんでいて、ときどき大きな息を吸いに海の上にのぼってくるといわれていますが、まだ誰一人として見た者はありません。
 ある日の事、海女たちは一度大蛇の姿を見てみようと、大勢で島に渡りました。
 そこで一番の磯かつぎ(いそかつぎ→磯でえものをとるのが上手な)の海女が、海の底にもぐって見ることにしました。
 海女は海底へ海底へともぐって行くと、美しくかがやくみこし車にお姫さまが乗って来ました。
 そして、お姫さまは海女に、
「いつまでも海女などをせずに、この海底で暮らしませんか。そうすれば、アワビやサザエがどんなに喜ぶことでしょう」
と、いったのです。
 でも海女は、
「いや、私が海女をやめれば、村の人は食べて行けなくなるので、海女をやめることはできません」
と、答えました。
 するとお姫さまは、
「ですが、アワビやサザエがかわいそうではありませんか。自分たちのために他の命をうばうとは」
と、いって、みこし車の中から大きな蚊帳(かや)を出して来て、いきなり海女の頭からすっぽりとかぶせたのです。
 海底へ海底へと沈みこまれた海女は、持っていたカマで蚊帳を切りやぶると、大急ぎで逃げ出しました。
 やっとのことで、大島の近くまで逃げて来ると、
「今日は城ヶ島の神さまと、大島の神さまが夫婦になられる日だから、ここを通っちゃいかん。七本組のサメがお使いとしてついて行くぞ」
と、いう声が、どこからともなく海女の耳に聞こえて来ました。
 そのころ、村ではみんなが、
「海へもぐって行った磯かつぎの海女がまだ帰ってこないが、どうしたのだろうか?」
と、さわいでいました。
 すると、沖のほうから来る海女があったので、さっそく漁夫が舟を近づけると、磯かつぎの海女だったのです。
 漁夫は急いで海女を舟に乗せて、村にひきかえしました。
 海女が村へもどって来た日が、五斎の日よりも一日すぎていたので、この日を、
《もどり五斎日(ごさいび)》
と、いうようになりました。
 それれからというものは、この島近くへは、磯とりに行かなくなったという事です。

おしまい

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