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6月25日の日本の昔話
幸運を招くネコ
招運貓
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
今から四百年ほどむかし。
大約四百年前。
あるボロ寺に、天極秀道(てんごくしゅうどう)というお坊さんが住んでいました。
一間爛爛款款个廟,有一位安到天極秀道(Tengoku Shudo)个和尚戴在這。
本当にボロ寺で、屋根は傾き、くずれた土塀(どべい)の穴から中が丸見えでした。
實在還爛,毋只屋棟斜忒,對崩敗个牆頭壁空仔,清清楚楚看得著屋肚。
それでも秀道はまったく気にせず、迷い込んだ一匹のネコとのんびり暮らしていました。
雖然恁樣,秀道根本無要無緊,摎一隻撞走个猫仔共下安然自在過日子。
ある年の春、秀道は寺の緑側(えんがわ)に座って、ひざの上のネコの頭をなでながら何気なく言いました。
某年春天,秀道坐在寺廟屋簷下,緊挲坐在腳膝頭頂該條貓仔个頸根,無意中講:
「『ネコの子ほども、役立たず』、という言葉があるが、お前もそろそろ役に立つネコになってはどうじゃ?」
「有一句俗語講:『比貓子較無用。』,你仰毋變條較有用个貓仔呢?」
そのとたん、ネコはひざからピョンと飛び降りて、
該下,貓仔Pyon聲在腳膝頭頂跳下來,
「ニャーオ」
と、鳴きました。
叫:「ngiau」
「おや、怒ったのかい?あははははは。気にするな。今のは冗談じゃ。お前は今のまま、役立たずでけっこう」
「唉哦,你發閼了係無?a-ha-ha-ha-ha-ha。毋好閼哪。頭下係摎你講笑仔。你摎這下共樣,無麼个用乜無相干。」
秀道はふたたびネコをひざに抱き上げて、一日中ネコと一緒にひなたぼっこをしました。
秀道再過摎貓仔揇上腳膝頭頂,歸日摎貓仔共下曬日頭。
それから数日後、表の方からにぎやかなウマのひづめの音が聞こえてきました。
幾日後,前方傳來一陣吵鬧个馬蹄聲。
「おや?客かな?」
「唉哦,有人客來係無?」
秀道が庭(にわ)に出てみると、七、八人の狩装束(かりしょうぞく→狩りの時の服装)をつけた侍(さむらい)が、次々とウマをおりて境内(けいだい)に入ってきました。
秀道行出庭院去看,七、八個著打獵服个武士,一個、一個下馬,行落廟裡肚。
「何か、ご用かな?」
「有麼个事係無?」
秀道が声をかけると、その中の主人らしい侍がていねいに頭を下げて言いました。
秀道開嘴問時節,其中一個像頭仔个武士,非常親切點頭,講:
「わしは、彦根(ひこね→滋賀県)城主の井伊直孝(いいなおたか)と申す。
「𠊎係彥根(彥根→滋賀縣)个城主井衣直孝。
この地方を新しく将軍さまから拝領(はいりょう→主人からいただくこと)することになったので、
這係𠊎在將軍該位新拜領著个所在,
遠乗りのついでに土地を見に来た。
𠊎騎了當遠个馬來看這片土地。
そしてたまたま寺の前を通りかかると、ネコがわしに手招きをする。
成時經過這廟頭前个時節,該隻貓仔摎𠊎擛手。
そこでつい、立ちよったのじゃ」
所以正會順路來到這位。」
「それはそれは。
こんな破れ寺(やぶれでら→荒れ果てた寺)に、よく立ち寄ってくださいました。
「實在,恁爛款个廟,歡迎你長下來。
わたしはこの寺の住職で、天極秀道と申します。
𠊎係這座廟个住持,天極秀道。
ごらんの通りの貧乏暮らしで何もさしあげるものはございませんが、せめてお茶なりともいっぷくしてください」
生活清苦像你看著个情形樣,無麼个好請你,毋過至少請啉一杯茶。」
秀道は一行(いっこう)を居間(いま)に案内して、お茶の用意を始めました。
秀道請一群人來到人客間,開始烳茶。
すると急に空がくもりだし、はげしい雷鳴(らいめい)とともに滝のような雨が降ってきたのです。
過後,忽然間天烏地暗,𥍉爧、響雷公,雨水像水沖樣落下來。
この寺に立ち寄らなければ、今頃はずぶぬれになっていたところです。
若係無在這座廟閃水,這下歸身會涿潦潦。
直孝(なおたか)は、とても喜んで、
直孝非常歡喜,講:
「助かった。あのネコに招かれたおかげで、運よく雨やどりが出来た。これも何かの巡り合わせであろう」
と、言いました。
「𠊎得救了,好得該隻貓仔擛手,𠊎恁好彩留宿避雨,這運數還好哪。」
「おそれいります。役立たずのネコにしては、上出来でした。どうぞ雨があがりますまで、ゆっくりしていってください」
「失禮,對無麼个用个貓仔來講,總算做一件好事,水停以前請好好休息。」
城主だというのに、とても親しみやすい直孝の態度に秀道はすっかり感心して、心からもてなしました。
因為講係城主,直孝親切態度,秀道對佢非常佩服。
直孝の方も、貧乏寺の住職とは思えない秀道の人柄(ひとがら)にほれこみました。
直孝乜盡中意秀道毋會因為係貧窮寺廟个住持看輕自家个性格。
やがて雨もあがり、直孝の一行は晴れ晴れとした気分で寺を出ていきました。
無幾久水停了,直孝一陣人、歡頭喜面離開寺廟。
一行を見送った秀道は、すぐにネコを抱きあげて頭をなでました。
送走佢兜个秀道,黏時揇起該條貓仔,挲一下頭那。
「人助けをするとは、大したやつ。おかげでわしも、久しぶりに立派なお方と話すことが出来たぞ」
「幫助別人係當重要,好得你,當久以來,𠊎正有機會摎個有身份个人交談。」
「ニャー」
「ngiau」
ネコはうれしそうに、秀道の胸に顔をうめました。
該條貓仔像形當歡喜樣,頭那鑽落秀道个胸口。
この事がきっかけで、直孝はちょくちょくこの寺をたずねるようになりました。
因為這因緣,直孝輒常會來這間寺廟。
そしてその度に、秀道は直孝に仏の道について語って聞かせました。
逐擺來个時節,秀道會講兜佛道相關个事分直孝聽。
そのすぐれた秀道の知識に、直孝はとても感心して、
直孝對秀道个淵博知識相當佩服,
「これぞ、まことの高僧(こうそう)である」
「佢確實係一個高僧。」
と、この寺を井伊家の菩提寺(ぼだいじ→一家の先祖を代だいをまつってある寺)としたのです。
摎這間寺廟準做井衣家族个菩提寺(Bodaiji→祖廟)。
こうして今までは荒れるにまかせていた寺は、井伊家によって改築(かいちく)され、各地から次々と修行僧も集まり寺は栄えていきました。
這間廟到這下還荒廢,井衣家族出錢重建,各地僧侶弛崗打陣聚集來這,過後這間寺廟香火旺起來了。
さて、あのネコは寺が立派になって間もなく死んでしまいました。
該條貓仔在廟變派頭,無幾久後就死忒了。
秀道はネコのために石碑(せきひ→はかいしのこと)を建てて、命日には必ず訪れたそうです。
秀道為貓仔起一座紀念碑石,逐隻忌日定著會來拜佢。
そして直孝もネコの事が忘れられず、秀道に言いました。
直孝無毋記得該條貓仔,摎秀道講:
「あのネコは、観音菩薩(かんのんぼさつ)の化身(けしん→仏が、人間や動物の姿に変身したもの)にちがいない。
「這條貓仔定著係觀音菩薩化身(佛陀變成人抑係動物个形象)。
わしはネコに招かれたおかげでそなたに会い、仏の道のすばらしさを学び、寺を復興(ふっこう)させる喜びまで与えてもらった。
打幫貓个邀請,𠊎正有機會認識你,了解佛道个寶貴,並分𠊎得著振興神廟个歡喜。
どうだろうか、あのネコを招き観音として本堂のそばにまつってあげては」
仰般,摎該條貓仔準招運觀音,放在正殿脣頭分人參拜好無。」
「はい。ネコにとっても、わたしにとっても、この上なくありがたいお言葉です」
「好,對貓仔摎𠊎來講,無比這較好个詞。」
この話しがたちまち広まり、『幸運を招くネコ』として、お寺にお参りに来る人がますます増えたということです。
這個故事黏時傳開來,聽講,因為『帶來好運个貓仔』來參拜這間廟个人越來越多。
おしまい
煞咧
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