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7月4日の日本の昔話
舞扇
舞扇
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、京の都に有名な踊りの師匠(ししょう→せんせい)がいて、大勢の弟子(でし)をかかえていました。
頭擺頭擺,京都有一個當有名个舞蹈師傅,收當多弟子。
その弟子の中に、けいこ熱心な雪江(ゆきえ)という娘がいて、一本の舞扇(まいおうぎ→日本舞踊に使う扇で。普通の扇より大きく、流儀の紋などをえがいたもの)をとても大切にしていました。
在厥弟子當中,有一個認真練習个細妹仔安到雪江,佢非常愛惜一支舞扇(舞扇maiougi→跳日本舞用个扇仔,比普通个扇仔較大,畫有流派个標誌)。
その舞扇は雪江が父にせがんで名高い絵師(えし→絵描き)に描いてもらった物で、今を盛りと咲いている桜の花が描かれた、それは見事な扇でした。
該支舞扇係雪江厥爸拜託世間有名个畫家所畫个,畫了這下開到茸茸个櫻花,係盡靚个扇仔。
さて、ある日の事。
有一日。
どうした事か、雪江はこの扇をけいこ場に忘れて帰ったのです。
毋知麼个事情,雪江摎這支舞扇放在練習場毋記得帶轉去。
それに気づいた師匠は、
注意著个師傅講:
「大切な扇を忘れると珍しい。まあ、明日来た時に渡してやろう」
「盡少人會毋記得恁貴重个扇仔,好,韶早來个時節正分佢。」
と、自分の机の上に置いておきました。
講煞,摎扇仔先放在桌頂。
ところが次の日、雪江は珍しくけいこには来ませんでした。
毋過,第二日,恁重要个練習雪江也無來。
そして次の日も、また次の日も、雪江はけいこに来ないのです。
第二日,第三日,雪江都無來。
「雪江に、何かあったのだろうか?」
「雪江敢發生麼个事情?」
師匠はふと、雪江の扇を広げて見ました。
師傅忽然間打開雪江个扇仔來看。
そこには扇面(せんめん→扇を開いた面)いっぱいに、明るく花が咲いています。
扇仔面頂開到淰淰、明明个花。
そこへちょうど、友だちの占い師(うらないし)が尋ねてきました。
該下堵堵一個算命朋友來拜訪。
「やあ、いらっしゃい。ほら、これをご覧なされ。弟子の忘れ物だが、優雅(ゆうが)な物じゃろう」
「啊,歡迎。噯,來看這隻東西,這是弟子毋記得个東西,但係這係一件幽雅个東西係無?」
師匠が広げたままの扇を占い師に渡すと、
師傅摎打開个扇仔拿分算命先生後,講:
「ほほう、これは美しい。・・・?」
「hoho,這恁靚。...?」
と、占い師はしばらくして、ポツリと言いました。
過一下仔,算命先生一字一字講:
「お気の毒ですが、この花は今日中に散りますな」
「還可惜,這兜花今晡日就會謝忒。」
「えっ?」
「麼个?」
やがて占い師が帰った後、師匠は再びその扇をながめました。
無幾久,算命先生轉去後,師傅再過摎扇仔拿來看。
(今日中に散るとは、いったいどの様な意味だ?)
(今晡日就會謝忒係麼个意思?)
占い師の言葉が気になった師匠は、それからもじっと扇をながめていました。
師傅盡愁算命先生个話,直直緊看扇仔。
すると妻がやって来て、
厥餔娘行過來,講:
「あの、お食事でございます」
と、声をかけました。
「噯,好食飯了。」
「ああ、もうそんな時間か」
「啊,恁暗了嘎?」
妻の声に我に返った師匠は、開いたままの扇を持って立ちあがりました。
聽到餔娘喊正醒个師傅,擎等本本打開開个扇仔企起來。
するとハラハラと、開いた扇から白い花びらが散りました。
過後,白色个花瓣對扇仔頂bid lid bog log跌下來。
散った花びらは風もないのにチョウが舞うと、空高く消えてしまいました。
在無風情況下跌下來个花瓣會像蝶仔飛舞,在天空中消失忒。
「何とも、不思議な事よ」
「仰會恁奇怪!」
そして花びらが散った扇を見た師匠は、さらにびっくりです。
師傅看著花瓣跌淨淨个扇仔,感覺還較驚。
「おお、これは!」
「哦,這仰會恁樣!」
何とそこにあるのはただの白い舞扇で、あれほど見事に描かれた桜の花がすっかり消えていたのです。
仰會該位伸一支白白个舞扇,畫到恁靚个櫻花總下毋見忒。
「これは、もしや雪江の身に!」
「這敢會摎雪江本身有關!」
師匠はカゴを用意すると、雪江の家に急がせました。
師傅準備好轎,緊觸觸趕去雪江屋下。
そしてカゴが玄関につくと、ちょうど母親が現れて言いました。
轎到雪江屋下玄關時節,厥姆堵好出來,講:
「先生。娘は、娘はほんの先ほど、息をひきとったところでございます。どうぞこちらへ」
「傅師,𠊎妹仔、𠊎妹仔頭下堵堵斷氣,請過來這片。」
案内された奥の間には、息をひきとった雪江が静かにねむっていました。
渡落裡背裡背間肚,斷氣後个雪江恬恬睡等。
そしてその周りには、どこから入ってきたのかあの桜の花びらがしきつめるように落ちていたという事です。
在佢四圍,毋知哪位來个櫻花花瓣鋪到淰淰。
註:料金を払うと、人を目的地まで運んでくれるもので、今でいう、タクシーのようなもの。
註:轎(kago) ;若係撿錢付費,斯會載你到愛去个所在,像這下个計程車樣。
竹や木でつくった乗り物を、2人~4人でかついで目的地まで運びます。
用竹仔無斯木料做个交通工具,做得載二~四儕。
大名行列で、お殿様がのるかごはともかく、急ぎの用で乗る早かごの乗り心地は最悪で、乗る人
中にぶら下がっているヒモにしがみつきながら、目的地に着くまで必死に振動を耐えます。
諸侯隊伍,國主坐个轎乜共樣,緊觸觸个轎坐著最毋爽快,坐轎个人,雙手捉核核掛在轎肚死死个
仔,直直愛忍受激烈振動到目的地為止。
目的地に着いて、かごの中を見てみたら、乗っていた人が気絶していたというのは、わりとあった
そうです。
到達目的地打開轎門來看,聽講成時乜會有人死忒。
ごの担い手は重労働であるため、料金はかなり高く、金持ちや身分の高い人が利用するものでした。
扛轎个人事頭當重,所以收費盡高,愛有錢人抑係身份高个人正會去坐。
おしまい
煞咧
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