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10月25日の百物語

大ムカデ退治

大ムカデ退治
滋賀県の民話滋賀県情報

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「つれづれ居士」  つれづれ居士

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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

【大人も子供も眠れる 優しい朗読】日本人の知らない日本昔話集 神話 龍の物語

 むかしむかし、近江の国(おうみのくに→滋賀県)に、俵藤太(たわらとうた)という弓の名人がいました。

 ある日、藤太(とうた)が琵琶湖(びわこ)にかかっている橋を渡っていると、人間の五倍もある大蛇(だいじゃ)が橋のまん中に横たわっていました。
 大蛇は二つの赤い目をランランと光らせて、口から炎を吐き出しています。
 普通の人なら逃げ出すところですが、さすがは弓の名人。
「こんなところに寝そべるとは、邪魔な奴だ」
 藤太はそう言いながら、大蛇の背中をゆうゆうと乗り越えて行ったのです。
 すると後ろから、声がかかりました。
「もし、もし」
(さては大蛇め、背中を踏まれて腹を立てたか)
 藤太が振り返ると、そこには大蛇の姿はなく、美しい女の人が立っていました。
「何か用か?」
「はい。あなたさまに、ぜひお願いしたい事がございます」
 美しい女の人は、ていねいに頭を下げました。
「正直に、申し上げます。
 わたくしの正体は、この橋の下に住むでございます。
 あなたさまがとても強い(さむらい)と聞いて、大蛇に化けて橋の上に寝ておりました。
 うわさ通りあなたさまは勇気のあるお方で、大蛇に化けたわたくしを見ても顔色一つ変えませんでした」
「なるほど。それにしても、美しい女に化けたものだ」
「ありがとうございます。
 それで、お願いしたい事でございますが、実は向こうに見えます三上山(みかみやま)に住む大ムカデが、時々この湖に来て、わたくしどもの仲間をさらっていくのです。
 今までに、どれほど多くの仲間がさらわれた事か。
 このままでは竜の一族は、ほろんでしまいます」
「うむ。しかし相手は、たかがムカデであろう。竜ならムカデなど」
「いいえ。
 ムカデと言っても、相手は三上山を七巻き半も巻くという大ムカデでございます。
 とてもわたくしどもが、勝てる相手ではありません。
 お願いです。
 どうか大ムカデを、退治してください」
 女の人に化けた竜は、手を合わせて頼みました。
 ここまで頼まれれば、藤太も断る事が出来ません。
「よろしい。大ムカデ退治を引き受けた」
「ありがとうございます。では、こちらへ」
 女の人は藤太の前に立って、琵琶湖の中に入って行きました。
 すると不思議な事に、女の人が進んで行く部分だけ水が引いていきます。
 藤太も女の人に続いて、琵琶湖に出来た道をどんどん進んで行きました。

 しばらく行くと、金銀をちりばめた御殿(ごてん)が現れました。
(ほう。これがうわさに聞く、竜宮城というものか)
 藤太がうっとりながめていると、竜宮城から竜王(りゅうおう)が家来を連れて藤太を出迎えてくれました。
「さあ、どうぞこちらへ」
 藤太の案内された部屋は、水晶をしきつめた大広間です。
 おぜんには山の様なごちそうが並べられ、金のかめには上等の酒がなみなみと入っています。
 やがて美しい女たちが現れて、笛や鐘(かね→小形の叩いて鳴らす楽器)の音にあわせて踊りはじめました。
(なんと、素晴らしい)
 藤太はまるで、夢の中にいる様な気分です。
 すると突然、大広間が暗くなりました。
「藤太さま、大ムカデがやってきました」
 藤太を竜宮城へ案内した女の人が震える声で言うと、我に返った藤太は弓と矢を持って立ち上がりました。
「よし、みんな隠れていろ」
 三上山の空がにわかに赤くなったかと思うと、何百もの火の玉がこっちへと向かって来ます。
 その何百もの火の玉の中に二つだけ、一段と光り輝いている火の玉がありました。
「あれは、大ムカデの目に違いない」
 藤太は弓に矢をつがえると、その二つの火の玉のまん中を目掛けて矢を放ちました。
 ヒューーン、ガチン!
 矢が岩に当たった様な音を立てて、はね返りました。
 藤太は素早く二本目の矢を放ち、さっきと全く同じところに命中させました。
 ヒューーン、ガチン!
 しかし二本目の矢も、はね返されてしまいました。
 矢はもう、あと一本しか残っていません。
 火の玉はどんどん近づき、やがて大ムカデの姿も見えてきました。
 二本の矢が命中したところには、傷一つありません。
「これは弱った、どうしたものか」
 さすがの藤太も、少しあわてました。
「どうしたらいいのだ? なにか弱点でもあれば良いのだが・・・」
 竜王は、藤太の横でおろおろするばかりです。
「弱点。・・・うむ。そうだ、忘れていた」
 藤太は三本目の矢の先を口に入れると、たっぷりと魔よけのつばをつけました。
 魔物というものは、人間のつばが大嫌いなのです。
 その矢を弓につがえると、藤太は力一杯引きしぼり、
「これでもくらえ!」
と、放ちました。
 矢はうなりをあげて飛んで行き、大ムカデの額(ひたい)へと突き刺さりました。
「ウギャーーー!」
 大ムカデは地響きの様な叫び声をあげると、それと同時に何百という火の玉が一瞬に消えて、ものすごい水しぶきがあがります。
 見ると額に矢を射られて死んだ大ムカデの体が、水面にゆらゆらとゆれていました。
「ありがとうございました。これで皆、安心して暮らせます」
 竜王は何度も頭を下げて、藤太にお礼を言いました。
 それから竜王は家来に命じて米を一俵と絹を一反(いったん→幅二十七センチ、長さ九メートルの布)、そして釣り鐘を一つを運んで来させて言いました。
「これはお礼のしるしです。どうかお持ちください」
 藤太は喜んで贈り物を受け取ると、竜王の家来たちに運ばせながら家へ持って帰りました。

 さて、不思議な事に竜王にもらった米俵の米はいくら使っても減る事がなく、絹の反物(たんもの)も切れば切るほど増えていきました。
 おかげで藤太は、何不自由なく暮らす事が出来ました。
 そして釣り鐘は近くの三井寺に奉納(ほうのう→寺や神社にものを納める事)され、その美しい鐘の音は琵琶湖を渡り近江の国のすみずみまで鳴り響いたと言われています。

おしまい

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