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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 4月の江戸小話 > 低い
4月3日の小話
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低い
暖かい、春の日の午後です。
お寺の一部屋を借りて勉強をしている書生(しょせい→学問をこころざしている人)が、お寺の小坊主に頼みました。
「何でもいいから、本を一冊持って来てくれ」
そこで小坊主が、和尚さんの本だなの中から『書経(しょきょう)』という、中国の政治の事が書かれた本を持って行きました。
すると書生が、それを一目見て、
「この本は、低い」
と、言いました。
「はあ、では別の本を持ってきます」
小坊主はそう言うと、今度は『詩経(しきょう)』という、中国最古の詩集本を持って行きました。
ところが、書生はまた一目見て、
「何だ、これも低いではないか!」
と、言いました。
困った小坊主は、和尚さんに相談に行きました。
すると和尚さんは感心して、
「なるほど。
『書経』と『詩経』を低いと言ったのか。
あの難しい本を二冊とも低いとは、あの書生どの、よっぽど学問を深めた偉い書生どのに違いないぞ!」
と、言うと、何冊かお経の本を持って書生の様子を見に行きました。
「書生どの。入りますぞ」
ところが部屋に入ると、書生は、ぶ厚い本をまくらに、グーグーと、いびきをかいて寝ていたのです。
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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