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      第 93話 
          
          
         
白いオオカミと温泉 
鳥取県の民話 → 鳥取県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
       むかしむかし、都(みやこ→京都)での戦いにやぶれて逃げのびた武将(ぶしょう)が、味方の力が再び盛り返す事を願って、その祈願(きがん)に鳥取の山奥にあるお寺をたずねていきました。 
 けわしい山中をお寺に向かっていると、むこうの林の中に白いオオカミがいるのが見えました。 
「ほほう。白いオオカミとは珍しい。しかも足を痛めている様子。射殺すのは簡単だ」 
 武将は弓に矢をつがえると、白いオオカミに狙いを定めましたが、 
「・・・やめておこう」 
と、弓矢をしまいました。 
「これから祈願(きがん)に行くのに、殺生(せっしょう)しては願いが叶うどころか罰が当たってしまうわ」 
 武将は林の中にいる白いオオカミをしばらく見つめていましたが、やがてその場を離れて山奥のお寺へむかいました。 
 
 それから、何日かたった夜の事です。 
 武将の夢に仏(ほとけ)さまが現れて、こんな事を言ったのです。 
「よく聞くがよい。 
 そなたが白いオオカミに出会った林の中に、大きなクスノキの株がある。 
 そこには万病に効く湯がわいておる。 
 病に苦しむ人たちを、それで救うがよい」 
 武将はさっそく、白いオオカミに出会った場所へ出かけていきました。 
 そして林の奥へ歩いて行くと、大きなクスノキの切り株のそばに湯がわき出ていました。 
「仏さまのお告げは、本当であったか。・・・お、あれは?」 
 武将が湯煙の中を見てみると、足をケガしたあの白いオオカミが、ケガの治療に入っていたということです。 
 これが、三朝温泉(みあさおんせん)の始まりだと言われています。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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