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      第 108話 
          
          
         
まめになれないとうふ 
愛媛県の民話 → 愛媛県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
      
       むかしむかし、おとうふが病気になりました。 
 それを聞いたダイコンが、お見まいに出かけることにしました。 
 でも一人で行くのははずかしいので、ゴボウをさそいに行きました。 
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」 
 すると、ゴボウが言いました。 
「わたしはぜんぜん風呂に入らず体中があかだらけで汚いので、色の白いダイコンさんと一緒に行くことはできません。おとうふさんには、どうかよろしくお伝えください」 
 
 そこでダイコンは、ニンジンのところへ行きました。 
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」 
 すると赤い顔のニンジンが、いよいよ顔を赤くして言いました。 
「じつは今、お酒を飲んだばかりです。こんな赤い顔をして、お見まいには行けません。だれかほかの人をさそってください。おとうふさんには、よろしく」 
 
 ダイコンはその足で、サトイモのところへ行きました。 
「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」 
 すると、小イモたちの世話をしていたサトイモが言いました。 
「それはお気の毒。一緒に行きたいのですが、このとおりたくさんの子どもがいますので、出かけることは出来ません」 
「それじゃ、子どもさんも一緒にどうですか? にぎやかな方が、おとうふさんも喜ぶと思いますよ」 
「とんでもない。子どもたちがさわいだら、おとうふさんの病気にさわります。すみませんが、よろしくお伝えください」 
「それじゃ、しかたがありません。一人で出かけることにしましょう」 
 
 そこでダイコンは、一人でとうふのところへお見まいに行きました。 
「おとうふさん、具合はいかがですか? ゴボウさんも、ニンジンさんも、サトイモさんも心配していました。早く元気になってくださいね」 
 すると、とうふが言いました。 
「ありがとうございます。おかげさまでだいぶ良くなりました。でも、もう元の体にはもどれません」 
「どうしてですか? そんな気の弱いことを言ってないで、早くまめになってくださいね」 
 ダイコンがはげましましたが、とうふはこまった顔で言いました。 
「わたしはとうふですから、まめになることはできません」 
(ああ、なるほど、それはお気の毒に) 
 ダイコンは、心の中で言いました。 
 
 『まめになる』というのは、『元気になる』という意味です。 
 まめはとうふになれても、とうふはまめにはなれないのです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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