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第 140話

ススキッ原の六地蔵

ススキッ原の六地蔵
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 むかしむかし、あるところに、「たけさく」、「はな」、「とめきち」という三人の兄弟がいました。
 家が貧しいため、三人はいつも腹ぺこです。
 でも、ススキッ原で遊んだ後で三人が、
「地蔵さま、あめ玉を一つ恵んでくださいな」
と、手を合わせると、六人並んだ地蔵の足もとに、あめ玉が一つずつ買えるだけのお金が光っているのです。
「地蔵さま、いつも子どもたちにあめ玉を恵んでくださり、ありがとうございます」
 子どもたちのお父さんやお母さんは、お礼に、いつも六地蔵を磨いてやりました。

 さて、ある年の大晦日の夕方、お母さんは子どもたちを呼びに、ススキッ原へ行きました。
「みんなー! ご飯だから、帰っておいでー!」
 何度も呼んでも返事がないので、お母さんは、ためいきをつきながら六地蔵に、
「お地蔵さま、あの子たちを叱ってやってくださいな。いつもあの調子なんですよ」
と、言って、
「きゃー!」
と、叫びました。
 何と、三番目の地蔵の首がないのです。
「誰だ! こんな罰当たりな事をしたのは!」
 お母さんは近くの木に登ると、首泥棒を探しました。
 すると遠くの方に、大きなふろしき包みを重そうにかかえて走って行く男の姿が見えました。
「首泥棒! 待てーーー!」
 お母さんは、その男にものすごい勢いで体当たりしました。
「うわっ!」
 男が転んだはずみに、持っていたふろしきがほどけて、中からやさしい地蔵の首が転がり出て来ました。
「こらー! 何て事をするんだ!」
 お母さんが地蔵の顔を奪い返すと、男は手をついてあやまりました。
「ゆっ、許してくれ。バクチ打ちは、地蔵の首を持っていれば負けないと聞いたんだ」
 そして男は、どこかへ逃げて行きました。
「バクチだって! 冗談じゃないよ! みんな必死に働いているというのに!」
 お母さんは、六地蔵のところへ戻ると、三番目の地蔵に顔を乗せました。
 そして継ぎ目があまりにも痛々しいので、家から赤い前かけを持ってきて首に巻きました。

 その日の夜は、大晦日だというのに、とても淋しいものでした。
 お父さんが笠を売りに行ったけれど、一つも売れずに帰って来たのです。
 でも、お父さんは、子どもたちに明るく言いました。
「明日はお正月だ。何もないが、せめて餅つく真似でもするか」
「うん。しよう。しよう」
 そしてみんなは、臼(うす)やら杵(きね)やら、餅つきに使う道具を外に出して、順番に餅をつく真似をしました。
 そして、つきたての餅を食べる真似をしました。
「ああ、うまかった」
「何も食べてないけど、食べたような気がするよ」
「明日も、餅をつく真似をしようね」
 みんなはそう言って、眠りました。

 さて、その真夜中の事です。
 外に出しっぱなしにしていた餅つき道具の所から、何やら音が聞こえてきます。
♪ぺったん、ぺったん、餅つきだ
♪首のお礼に、餅つきだ
 その音に、寝ていたみんなは目を覚ましました。
「なんだろう?」
 そして、そっと外を見ると。
「あっ!」
「六地蔵様が餅をついてる!」
「それも、本当の餅つきだ!」
 何と外では、六地蔵が餅つきをしていたのです。
 餅米はまだまだたくさんあり、正月用の魚や野菜も山の様に積んであります。
 やがて六地蔵は餅つきを終えると、お母さんが赤い前かけを巻いてやった三番の地蔵が、家の中でびっくりしている家族に向かって言いました。
「これは、首を取り返してくれた礼だ。おれたちはもう帰るが、もち米はまだまだあるから、後はお前たちでつくがいい。では、良いお正月をな」
 そして六地蔵はススキッ原へ帰って行き、家族は残された餅米や餅や魚や野菜で、とても楽しいお正月を過ごしたという事です。

おしまい

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