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6月10日のイソップ童話
  
  
  
ワシのまねをしたカラス
   むかしむかし、1羽のワシ(→詳細)が狩りをしていました。
   ワシは高い岩の上から、さーっと舞い降りたかと思うと、子ヒツジをするどい爪でがっちりつかみ、あっという間に連れ去ってしまいました。
  「かっこいいなぁ」
   そのすばらしくどうどうとしたワシの様子を、1羽のカラスがうっとり見ていました。
  「ぼくもあんなふうに狩りをするんだ。せこせこと木の実をつつくなんて、もうやめた」
   カラスはさっそくワシのまねをしました。
   つばさを広げ、ビュッと、大きな羽の音を立ててえものをねらいました。
  「どうせなら、ワシがつかまえたのより大きなヒツジをつかまえてやろう。あんなふうにガシッと深く爪を立ててれば、ヒツジなんかかるいもんさ」
   カラスは、ヒツジの群の中でいちばんよく太っているヒツジの背中に飛びつきました。
   しかし、ヒツジは重すぎてカラスにはとても持ち上げられません。
  「しかたがない、子ヒツジでがまんするか」
   カラスは飛び上がろうとしました。
   でも、いくら力一杯羽ばたいても、爪がヒツジの巻き毛にからまって、うごくことができません。
   バタバタともがいているうちに、とうとうカラスはヒツジ飼い(→詳細)の男につかまえってしまい、羽を切られてしまいました。
   さっそく、ヒツジ飼いのこどもたちが、この様子を見にあつまってきました。
   1人のこどもがたずねました。
  「お父さん、この鳥はなんていう鳥なの?」
   するとヒツジ飼いは、笑いながら答えました。
  「お父さんは、こいつはどう見てもカラスだと思うんだ。でも、こいつは自分のことをワシだと思っているみだいだね」
  
   自分とはぜんぜんちがう、人のすぐれたところだけをまねようとしても、決してかんたんにはうまくいきません。
   そればかりか、このカラスのようにみんなに笑われてしまうと言うお話でした。
おしまい