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2月24日の日本の昔話
  
  
  
  よっぱらいのばけものたいじ
 むかし、酒のみのさむらいが、酒のうえのしっぱいから、浪人(ろうにん→詳細)になってしまいました。
  「どこかに、つとめ先がないかなあ」
   浪人が京の町をあるいていくと、たてふだのまわりに人だかりがしています。
   なんだろうと、のぞいてみると、
  《三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)のばけものをたいじしたものには、のぞみのほうびをとらせる》
  と、かかれています。
   浪人はさっそく、御所(ごしょ→天皇のいるところ)へでかけ、役人にいいました。
  「ばけものをたいじしてきますから、酒をかう金をかしてください」
   こうして酒を手に入れた浪人が、三十三間堂のかたすみでよっぱらっていると、ま夜中に、ものすごい足音がして、ヒゲモジャの三つ目大入道が現れました。
  「おい、おきろ!」
   浪人を、ひとつかみにしようとしましたが、浪人はよっぱらっているので、おそろしくもなんともありません。
  「これはこれは、ばけものさまでございますか。まずは、はじめまして」
   おどけたちょうしで、あいさつしました。
  「ほほう、おまえのようなかわりものは、はじめてじゃ。・・・ああ、はじめまして。して、ここへ、なにをしにきた」
  「ばけものさまは、聞いたところによりますと、たいそうのばけじょうずとか、せけんでは、もっぱらのひょうばんです。そこで、そのばけっぷりを、とくとはいけんしたいと思い、ここでおまちしておりました」
   浪人におだてられて、ばけものは、わるい気がしません。
  「そうか、それほど有名なのか。オホン。では、ちょいとみせてやるか。いくぞ!」
   まずは、きれいなお姫さまにばけました。
  「おおっ、さすがは、ばけものさま。天下一のばけっぷり」
   浪人のおだてに、気をよくしたばけものは、「トラ」、「カッパ」、「りゅう」、「赤鬼」など、つぎつぎに化けて見せました。
  「いや、これはおみごと! うわさにまさるばけっぷりですな。しかし、さすがのあなたさまも、小さなウメボシには、ばけられないでしょうな」
  「なにをいうか、みておれ」
   ばけものはひとつぶのウメボシに、ばけてみせました。
  「おおっ、うまそうだ。酒のあてには、これが一番」
と、いうと、浪人はそのウメボシをペロリと食べてしまいました。
おしまい