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2月17日の小話
水、おのぞみしだい
   世の中には、いろいろな商売があるものです。
   江戸の町に、
  《水、おのぞみしだい》」
  と、いうかんばんをかけている家がありました。
  「ご亭主、水おのぞみしだいとは、ほんとうか?」
  と、いじ悪そうな男が、店に入ってきてききました。
  「はい、さようで」
  「では、まるい水がほしい。できるか?」
  「はい、すぐに」
   亭主は、きれいな茶わんに、水をいっぱいくんで持ってきました。
  「これ亭主、これがまるい水か?」
   男は、わけがわからないのできくと、
  「はい」
  「どうしてまるいのだ」
  「はい、澄(す)みきっております」
  「なに、なんじゃと?」
「それでわかりませんのなら。澄みきる、すなわち、すみをきった、まるい水でございます」
おしまい